ウシジマくん呟き

深夜番組

2026/05/16 13:28
社長は全て色々分かってそう。
柄崎のこと。って呟き話し。


深夜一時過ぎ。
ソファにだらけた柄崎が、リモコンを片手にチャンネルを回している。
芸人。ニュース。海外ドラマ。

「……なんだこれ」

止まった画面には、やたらピンク色のテロップ。

『気持ちいいキスの仕方♡』

 スタジオの女が、「焦らしが大事なんです〜!」と笑っていた。
 柄崎は半笑いになる。

「こんなん見なくても、大体の男なら知ってるようなことっすよね。」

隣の社長へ振り返る。

「どう思います?」

 社長はソファの背へ腕を預けたまま、テレビをぼんやり見ていた。

「⋯知るかよ」

 興味なさそう。

「っすよね」

柄崎が笑って、またリモコンへ手を伸ばしかける。

「柄崎」

「……はい?」

社長の視線が、ゆっくりこちらへ向いていた。

静かな目。
次の瞬間、伸びてきた指が、柄崎の顎を軽く掴む。

「え」

親指が、下唇をなぞった。

ゆっくり。
輪郭を確かめるみたいに。

「……っ」

柄崎の肩が小さく揺れる。
社長は何も言わない。
ただ、じっと顔を見たまま。
その距離のまま、止まる。
近い。
でも、触れない。
息だけが唇へかかる。
柄崎の呼吸が先に乱れた。

「しゃ、ちょ……」

焦れる。
早く触れてほしいのに、社長はわざとみたいに動かない。

柄崎が耐えきれず、少し顔を寄せた瞬間。
ようやく、唇が重なった。
軽い。
一瞬。
でも離れる時、わざと唇を掠めていく。

「……は」

頭が熱い。
もう一回欲しくなる。
そのタイミングで、また少しだけ離される。

追うみたいに柄崎が顔を寄せると、社長はそれを待っていたみたいに、もう一度触れた。

今度は少し深い。

角度を変えて、下唇を軽く食む。

強引じゃない。
なのに、息が詰まる。
唇が離れるたび、身体の奥が落ち着かなくなる。
社長の指が、柄崎の首筋をゆっくり撫でた。

「……っ、ん」

喉が震える。
また浅く重なる。
少し焦らして、また離れる。
その繰り返し。
完全には満たしてくれない。
だから余計、欲しくなる。
気づけば、柄崎の手は社長の服を掴んでいた。
社長はそれを見て、少しだけ口元を歪める。
最後にもう一度だけ、軽く触れるキス。
長めに。
唇の熱だけ残して、ゆっくり離れた。

「……っ、は」

呼吸が乱れる。
社長は平然としている。
それが悔しい。

「……社長」

「何」

「経験あんすか……」

社長が目を細める。

「さぁ」

「さぁって……」

 柄崎が眉を寄せる。

「無いキスじゃなかったっすよ」

「お前の思い込みだろ」

「いや絶対……」

「柄崎が勝手に感じてんだろ」

「俺のせいじゃねぇ」

「……っ」

言い返せない。
またしてほしい、って顔になってるの、全部見抜かれてる。
社長はそんな柄崎を見ながら、また親指で唇を撫でた。

「で?」

「……はい?」

「番組の感想」

テレビではちょうど、 司会者の女が笑っていた。

『“続きしたいって思わせた方が勝ち♡”』

 社長が鼻で笑う。

「当たってんじゃねぇか」

柄崎は数秒固まって、そのままクッションを顔へ押し付けた。

「……最悪っす」

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