ウシジマくん呟き

社長と映画

2026/03/18 19:44
夕方。
商店街のアーケード。
揚げ物の匂い。
八百屋の呼び声。
人のざわめき。
柄崎は歩いている。
手にはくじ引きでもらった紙。
映画ペアチケット。
ポスターの絵がやたら派手だ。
高層ビルが爆発していて、炎の中をバイクが突っ込んでいる。
空には戦闘ヘリ。
黒いコートの男が
両手に銃を持って走っている。
その後ろでは車が横転して火花が散っている。
いかにもなアクション映画。
柄崎は少し笑う。

「……すげぇ爆発してんな」

チケットを裏返す。
ペア。
二枚。

「俺映画あんま観ないんだよな…」

ポケットに入れようとして、少し手が止まる。
頭に浮かぶ。
社長。
腕組んで無言で映画見てそうな顔。
爆発しても表情変わらなそう。
でも、こういうの意外と好きそうな気もする。
柄崎は携帯を出す。
少し迷う。
でも打つ。

商店街で映画チケット当たったんすけど
アクション映画なんすよ
社長、観ます?

送信。
既読。
早い。
数秒後。
返信。

いらねぇ

柄崎は思わず笑う。

「ですよね」

でも、もう一回送る。

ペアなんすよ
既読。
返信。

一人で行け

柄崎は少し考える。
それから送る。

映画館一人ちょっと寂しいっす

送信。
既読。
返信がこない。
柄崎は歩きながら
もう一度ポスターを見る。
炎。
銃。
爆発。

「社長こういうの好きそうなんだけどな…」

そのとき。
携帯が震える。
メッセージ。

明日なら空いてる

柄崎が止まる。
画面を見る。
一瞬、頭が真っ白になる。
それから

「……え」
思わず声が出る。

周りの人が少し振り向く。
柄崎は慌てて歩き出す。
口元が勝手に緩む。
抑えようとしても
全然抑えられない。
すぐ返信する。

じゃあ明日行きましょう

送信。
既読。

場所送れ

柄崎はチケットを見つめる。
急に、それがすごく良いものに見える。

「社長と映画か…」

歩きながら

つい笑ってしまう。

「やべぇ…」

小さく呟く。

「めちゃくちゃ嬉しいんだけど…」

しばらくして、また携帯を見てしまう。
既読のまま。それだけなのに、胸の奥がちょっとだけあったかかった。

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