ウシジマくん呟き

触りたい欲 おわり

2026/02/24 12:15
唇が重なったまま、離れない。
息が混ざる。
荒くなった呼吸が、互いの頬を熱くする。
社長の手が背中から腰へ落ちる。
逃がさない位置。
指先が布の上から、ゆっくりと形を確かめる。
柄崎の喉から、抑えきれない息が漏れる。

「……っ」

自分でも驚くほど、身体が正直だ。
触れているだけのはずなのに、芯の奥が熱を持つ。
社長の額が、柄崎のこめかみに触れる。
低い声が、耳元に落ちる。

「戻れねぇぞ」

確認じゃない。
宣告でもない。
ただ事実。
柄崎は、掴んでいたパーカーをさらに握る。

「……戻る気、ないっすよ…」

震えているのは、声だけじゃない。
社長の手が、今度はゆっくりと上へ滑る。
背中。
肩。
首筋。
触れ方は強くない。
けれど、確実に主導を握っている。
唇が再び重なる。
今度は、深く。
柄崎の指が、無意識に社長の背中を辿る。
硬い筋肉の感触。
確かな重み。
逃げたいわけじゃない。
むしろ、もっと近く。
胸が押し付けられる。
体温がはっきりと重なる。

「……欲しかったのは」

社長の声が、かすれる。

「これか」

柄崎は答えない。
代わりに、首元に顔を埋める。
匂いを吸い込む。
身体の奥が、さらに熱くなる。
社長の手が、顎を上げさせる。
視線が合う。
もう試す目じゃない。
次の瞬間、体勢が反転する。
社長に押し込まれる形で、机の端に身体が当たる。
書類が落ちる。
紙の音が、やけに遠い。

「……最後までいくぞ、後悔すんなよ」

柄崎の呼吸が乱れる。
逃げない。
むしろ、迎えにいく。
触れたい欲は、もう止められない。
絡んだ体温が、境界を消していく。
事務所で二人の距離は、完全に崩れた。

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