ウシジマくん呟き
触りたい欲6
2026/02/23 01:50室内は、息を潜めたみたいに静かだった。
開きかけの書類。
机に落ちる蛍光灯の白。
その光の中で、二人だけがやけに近い。
社長は椅子に身を預けたまま、ゆっくりと視線を上げる。
「手慣れてるんじゃねぇのか」
声は低く、平坦。
けれど、その奥にわずかな棘がある。
柄崎の喉が、ひとつ動く。
「……違います」
短い否定。
呼吸が少し浅い。
「同じにしたくないんすよ」
目は逸らさない。
逸らせない。
「何を、だよ」
低い問いが、間を詰める。
柄崎の指はまだ触れている。
胸元の布越しに、わずかな体温を拾う。
「今までみたいな触り方」
「…丑嶋社長だけには、軽くしたくない」
その言葉に、空気が変わる。
社長は黙ったまま、片肘を机につく。
指先を顎に添え、じっと柄崎を見る。
観察するように。
値踏みするように。
「面倒なこと言うな」
吐き捨てるようでいて、距離は一歩も引かない。
沈黙が落ちる。
柄崎の胸が上下する。
迷いと、衝動と、熱。
ゆっくりと手を動かす。
胸元から、滑らせるわけでもなく、
引くわけでもなく――
社長の手を取る。
指先に触れた瞬間、体の奥がかすかに震える。
絡める。
ぎこちなく、でも強く。
「……ここなら」
息が近い。
「余計なこと考えなくて済みます」
指の間に、じわりと体温が溜まる。
社長は黙っている。
けれど、逃げない。
視線が絡む。
その目が、静かなまま熱を帯びる。
「それで足りるのか」
低く問われる。
柄崎は、ゆっくり首を振る。
「足りないっす」
はっきりと。
指をさらに深く絡める。
心臓の音が、自分にだけうるさい。
「…」
吐息が混ざる距離。
社長の指が握り返してくる。
強く。
逃がさない力。
蛍光灯の下、絡んだ指先が、境界を曖昧にしていく。
書類は開いたまま。
けれど、もう二人ともそっちを見ていなかった。
触れているだけなのに、それ以上のことが、確実に始まっていた。
開きかけの書類。
机に落ちる蛍光灯の白。
その光の中で、二人だけがやけに近い。
社長は椅子に身を預けたまま、ゆっくりと視線を上げる。
「手慣れてるんじゃねぇのか」
声は低く、平坦。
けれど、その奥にわずかな棘がある。
柄崎の喉が、ひとつ動く。
「……違います」
短い否定。
呼吸が少し浅い。
「同じにしたくないんすよ」
目は逸らさない。
逸らせない。
「何を、だよ」
低い問いが、間を詰める。
柄崎の指はまだ触れている。
胸元の布越しに、わずかな体温を拾う。
「今までみたいな触り方」
「…丑嶋社長だけには、軽くしたくない」
その言葉に、空気が変わる。
社長は黙ったまま、片肘を机につく。
指先を顎に添え、じっと柄崎を見る。
観察するように。
値踏みするように。
「面倒なこと言うな」
吐き捨てるようでいて、距離は一歩も引かない。
沈黙が落ちる。
柄崎の胸が上下する。
迷いと、衝動と、熱。
ゆっくりと手を動かす。
胸元から、滑らせるわけでもなく、
引くわけでもなく――
社長の手を取る。
指先に触れた瞬間、体の奥がかすかに震える。
絡める。
ぎこちなく、でも強く。
「……ここなら」
息が近い。
「余計なこと考えなくて済みます」
指の間に、じわりと体温が溜まる。
社長は黙っている。
けれど、逃げない。
視線が絡む。
その目が、静かなまま熱を帯びる。
「それで足りるのか」
低く問われる。
柄崎は、ゆっくり首を振る。
「足りないっす」
はっきりと。
指をさらに深く絡める。
心臓の音が、自分にだけうるさい。
「…」
吐息が混ざる距離。
社長の指が握り返してくる。
強く。
逃がさない力。
蛍光灯の下、絡んだ指先が、境界を曖昧にしていく。
書類は開いたまま。
けれど、もう二人ともそっちを見ていなかった。
触れているだけなのに、それ以上のことが、確実に始まっていた。
