デートは二人共充実したものとなった


水族館に行けば最初こそ人混みに眉をひそめていた跡部だったが彩の『デートの醍醐味だ』と話せば納得し手を繋ぎ回った

昼時も水族館内にあるレストランで魚を見ながら食事をし、午後はイルカショーを見て過ごし夕方には跡部の別荘に戻ってきた







『楽しかった』


今は跡部のもつプライベートビーチ
パラソルの下で跡部と一緒に椅子に横になっていた


「良かった」


綺麗だったなぁ、と彩は呟き目を閉じる

跡部はそんな彩の方に体を向ければ上半身を起こし髪を撫でる

彩はうっすら目を開け跡部を見る


『景吾は、楽しかった？』


「あぁ、悪くなかったぜ」


『変な返し…でも、よかった』


撫でる手に自身の手を重ねれば再び目を閉じ跡部の手の甲にキスを落とす


『…デートって、楽しいね…その人の普段見れないことも分かってくる』


私服姿の跡部、ちょっとした時に見せる表情、仕草、完璧な彼だけど意外と不器用な所もあったり

それが今回のデートで分かった　

跡部がどれだけ努力し、尚も努力し続けているのか


自分がそんな事を言うなんておこがましいんだろう

でも１日一緒にいただけでそれが分かった


この人を、知りたい


亮達に向ける感情とはまた違うこの湧き出るような感情…これが恋とか愛とかというものだろうか


『景吾』


「ん？」
　

海を見ていた跡部が彩の声掛けに顔を向けると目を見開く

そこにはいつもの無表情ではなく綺麗な微笑みを浮かべた彩が上半身を起こしこちらを見ている


『連れてきてくれてありがとう』


「っ、…あぁ」


そう呟き跡部が彩の頬に手を当て近づいてくると自然に彩も目を細め唇を受け止める

角度を変え深くなっていくキスに彩はそっと跡部の首に腕を回す

そんな彩の腰を引き寄せ体を密着させればゆっくりと彩の体を押し倒しキスを堪能する


「彩…」


息が乱れる中、唇が離れ至近距離で名前を呼ばれ跡部を見ると真剣な目でこちらを見つめている


『なんだい…？』


「嫌だったら蹴るでも殴るでもして止めろよ」