最近、彩に新たにしていることがある


『侑士』


「ん？あぁ、待っとったで」


氷帝学園にあるサロンで読書をしていると後ろから声をかけられ振り返ると彩が居て座るように言う


『持ってきてくれたかい？』


「おん。ほい」


机の上に紙袋を置けば彩が手を伸ばし中身を確認して再び閉じる


『ありがとう…今週中に返すから』


「ええよええよ。姉貴に聞いたら読まん言ぅてたからいつでも…にしてもそんなに読んでなんかあるん？」　


忍足の言葉に一瞬固まるも目の前の紙袋に視線を向ける


『……ただ、未知の世界を知りたいだけ』


「未知の世界？」


『侑士は誰かと付き合ったことはある？』


彩から思いがけない言葉に忍足は思わずポカンと口を開けるもすぐに表情を戻す


「そ、そら、あるで？」


『…自分はそういうのが疎いんだ。分からない、と言ったほうが正しいと思う。だから勉強の為、これだ』


ポンポンと紙袋を叩き忍足を見れば面白そうに机に肘をつきこちらを見てくる


「…誰か好きになったん？」


『そうじゃなくて……何を思って好きだというのか…どう思うのが好きなのか…』


「んー…そうやなぁ…その辺は人それぞれやと思うで？四六時中相手の事を考えてしまう、とか？」


『四六時中…』


「好きな人の為に何かをしてあげたい、喜ぶ姿が見たい、一緒に居たい、見ていたい、自分だけを見てほしい、触れたい、触れられたい」


『……頭が痛い』　


忍足の言葉に彩は頭を抱える


「わいが言えるのは愛の形さ色々や…ただ素直に相手に向き合えばええ…想い合いや」


想い合い、彩は口の中でそう呟き忍足を見る


『…変なことを聞いてもいいか』


「？」


『侑士が彼女にされて嬉しいことはなんだった』


「………………は？」


突拍子もない言葉に忍足は今度こそ表情を壊し目を見開く


『………馬鹿な事を聞いた、忘れてくれ…じゃあこれは借りていく』


「お、おん…ぁ」


カタンと立ち上がり紙袋を持てばじゃ、と手をあげる

すぐに彩、と呼ぶ声が聞こえ忍足に顔を向けると隣にくるようにジェスチャーしてきて素直にそこに行けば内緒話をするような仕草に彩は身を屈めると耳元であることを囁かれ全て聞き終えると頷いた