「好きだ、彩」


そう伝えてきた跡部に彩は固まりただ混乱して何も考えられずにいた

真剣なアイスブルーの瞳に引き込まれ目が離せない


分からない…


分からない…景吾の気持ちが


分からない、自分の気持ちが


分からない事が多すぎてどうするべきなのか、どう動くべきなのか、思考が定まらない


『…っ、なぜ、』


「なぜ俺がお前を好きになったか、か？」


跡部の言葉に頷けば体が離れ少し考えるような素振りを見せる


「…最初はただ彼奴等の幼馴染、としか思わなかった。才色兼備なお前みたいな幼馴染がいたことにびっくりだ…それからマネージャー業が始まった」


彩は語りだした跡部の言葉を目を閉じながら聞く


「何事も手を抜くこともしねぇし、動き回るお前はなんか危なっかしいし、いつ倒れるか見てるこっちがハラハラしたぜ…まぁ、実際倒れたわけだが」


『あの時は申し訳なかった』


素直に謝る彩は未だに目を閉じたままだったが跡部の手が彩の顎を持ち上げたことで目を開けると再び真剣な目と目が合う


「多分俺は最初から、お前に惹かれていた」


入院するずっと前、テストで上位の位置にいる彩の名前をみた時から


生徒から名前が出るたびに思わず反応し


廊下で見かけるたびに目で追っかけていた

それが宍戸達と幼馴染という事実に柄にもなく接点ができた事に喜びを感じた


『キミとは…景吾とは話したこともなかったはずだ』


「ねぇな…今まで一度も」


それでも

入院中に思わず触れたくなって頭を撫でた時に見せた表情に"愛おしい"と思った

そして手に入れたい、とも


「お前はどう思ってる」


『…分からない』


「分からない？」


『分からないんだ、その類の事は…』


人を好きになったこともない

大切だと思う人達はいるがそれはまた違う感覚なのだろう

"未知の世界"に飛び出す勇気はない

今の現状で満足しているから


自分の気持ちをそのまま伝えれば跡部は目を細める


「…じゃぁ、誰かと付き合ったことはないんだな」


『そういうことだね』