『！』


亮の言葉にハッとしたように顔を上げる


『…それだ』


「は？」


『亮、悪いけど私の頭を撫でてくれ』


「はぁ？！」


彩の急なお願いに宍戸は目を見開けば眉を潜める


『昔はよく撫でてくれてたじゃないか』


「小さい頃な？！」


『ほら、やってくれ』


無表情でマイペースな彩に宍戸は頭を掻きむしり諦めたように溜息を吐く


「い、一回だけだからな」


そう言えば宍戸が彩の頭に手を当て少し強めに頭を撫でる


『…………』


その感触に彩は黙り込み目を閉じる

亮に撫でられる感触は昔から変わらない

兄貴分なところも、面倒見が良いところも変わらなくてホッとする

でも、景吾に撫でられた時の心がじんわり温かくなる感じはない


…この違いは…


「これでいいか？なにか分かったのか？」


『うん、ありがとう…分からないけど分かった気もする…』


「なんだそりゃ……っ」


苦笑しながら手を離した宍戸に言えば一瞬破顔するも吹き出すように笑い再び強めにくしゃくしゃと頭を撫でられる


『痛い痛い…変なこと頼んで悪かったよ』


ボサボサになった髪をそのままに宍戸に顔を向ければ何故か彩の背後を見て顔を青くしている


『？』


彩が振り返ればそこには顔を般若にした跡部がこちらに向かってくる


『亮、景吾を怒らせるようなことしたのかい？』


「してねぇよ？！」


じゃぁナゼ跡部はあんなに怒って、と口を開こうとするも跡部は舌打ちをして彩の腕を掴み


「ちょっとこい」


怒り口調で言う跡部に宍戸は何も言えず連れて行かれる彩を見送るしかなかった