「跡部君」


背後から聞こえた言葉に思わず振り返ればそこには可愛い女の子が跡部に声をかけているところだった

「なんだ」


「ちょっとだけ時間もらってもいい？」


顔を赤らめ一生懸命な姿は女の自分から見ても可愛く美しく見えた
そんな彼女の方に向き直る跡部


パチ


その時目が合うが一瞬で離れ彩は2人から視線を反らし背中を向けた


最近の自分は良く、分からない

きっかけは絶対に跡…景吾にキスをされてからだ

それから頭を撫でられたときも


名前を呼ばれたときも


心の中がポッと、温かくなった


なのに、これは何なのだろう

先程の女の子はきっと景吾に告白したのだろう…


…恋…青春…


自分には無縁なもの




なのに何なのだろう、この胸をつっかえるようなモヤモヤは

先程の光景が何故か頭から離れない







『…ということなんだが、なんだか分かるかい？』


「………は？」


急にクラスに来たかと思えば開口一番にそんな事を言われ宍戸は首を傾げる

慈郎は席で寝ており彩が来たことに気づいていない


『亮は誰かを好きになったことはあるかい？』


「は、はぁ？！ちょ、ちょっとこい！」


そういった話に免疫がないのか宍戸が顔を赤くして声を上げるもクラスメイトの視線を真っ向に受けハッとしたように彩の腕を掴み廊下に出る

人目につかない端の方まで行けば腕を離し腕を組む



「んで？どういうことだ？」



『……なんていえばいいか…ねえ、亮、好きになる、ってなに』



「質問の意図がよくわかんねぇけど…好きってのはその人に近づきたいとか仲良くなりたいとか…一緒にいてドキドキするとか…？違う女が近くにいたらヤキモチやいたりとか…」


『………』


亮の言葉に考えるように顎に手を当てる


「一緒にいると心が満たされてホッとする感じだと思う」