頭を撫でられるなんていつぶりだろうか…


目を閉じそんな事を考える


小さい頃は幼馴染達にはよく撫でられたが中等部に入ってからはこれが初めてじゃないだろうか…


父親とは違う大きな手の平に撫でられ彩は目を開けると跡部と目が合う


「なんだ」


『いや…撫でられるのなんて久々だなぁって…』


目を細め呟くように言うと跡部は何故か目を見開く


『？』


その様子に彩は首を傾げる

その時の彩はいつもの無表情ではなく安心したようにほのかに笑みを浮かべていたのだ


「そんな表情もできるんだな…」


ポツリと呟き頭から手を離すと立ち上がりそっと彩の頬に手を当てる

そしてゆっくり顔を近づけキスをし顔を離すと彩は目を見開いている

驚いている彩を見つめ許しを請うように唇に触れ跡部は眉を下げる


「…悪い…また来る。ゆっくり休め」


背中を向け出ていってしまった跡部に彩はしばらく茫然としていた










念の為精密検査するとのことで数日入院することなり病院のベッドで過ごすことになった彩は眉を潜め横になっていた


…なにがあった


何故生徒会長があんな行動をしたのかが理解出来ず先程から近づいてくる跡部の顔を思い出しなんとも言えない気持ちになる

長い睫毛も綺麗な瞳が一瞬揺れたかと思えばキスをされすぐに居なくなってしまった


…しかも悪い、ってなに


あんなイケメンにキスをされ舞い上がるほど乙女ではないが最近よく話すようになって生徒会長…跡部の人となりも分かるようになった

テニス部全員を束ねるほどのカリスマ性
成績は常に１位でスポーツ万能

言わずもがな顔も整っていてファンクラブもある

でも本当は努力家で何事も手を一切抜くことはない

テニスにしろ勉強にしろ生徒会にしろ

常に考え行動に移している

周りの変化もよく気づき、感情を表に出さない自分にも気をかけてくれる


「ちょっと休憩しろ」


そう言ってドリンクをもらったり



「俺様がもってやるよ」


教師に頼まれてノートを運んでいたらわざわざ持ってくれたり


「少し時間いいか？お前の意見が聞きたい」


いつだったか何故か男子に絡まれてしまい動けずにいたときに声をかけてくれたり





自他共に認めるくらい感情に左右される人間ではないが今回の事については理解に追いつかず何故かモヤモヤしてくる



……うん、分からない


大きな溜息を吐き目を閉じた