病院のベッドで横になっている彩を見て跡部は目を細める

運ばれてすぐ検査をしたにも関わらず異常は見つからなかった

きっと熱中症と疲労が重なったんだろう、という医師の見解だった


確かにマネージャーになってからは花岡の環境は一変した

責任感が強い彼女は手を抜くことをせず部員が全力で部活動が出来るように動いてくれていた

他の部員が手伝っていても疲労は溜まっていってたのだろう

忍足には連絡済みで忍足から全員に伝えてもらっている

ジローはお見舞いに行きたいと電話越しで騒いでいたがとりあえず今日はダメだ、と伝えた


「……早く目を覚ませ…彼奴等がうるせぇんだよ」


彩の髪に手を伸ばしポツリと呟けば彩の瞼が震えゆっくり目が開く

それを確認すれば安堵の息を吐き髪から手を離す


「花岡、起きたか」


『…生徒会長…？』


何故、と彩が呟くも自分が倒れた事を思い出し『…ああ…そっか』と溜息を吐き目を閉じる


『申し訳ない』


「熱中症と過労だとよ」


『そう…ちゃんと対策してたつもりだったけど足りなかったようだね…』


表情変わることなく淡々と言う彩に跡部も溜息を吐く


「これから彩はレギュラー陣限定のマネージャーにする…平部員の方は平部員にやらせるからな」


『皆頑張ってるのに？』


「それでお前が頑張りすぎて倒れたら元も子もねぇだろうが…これは決定事項だ。マネージャーの世話になりたきゃ上に来いってことだ」


少しきつい跡部の声に彩は目を開け跡部を見る


『…迷惑かけたね…』


「迷惑じゃなく心配したんだ…ジローなんて目の前で彩が倒れて取り乱してたんだからな」


なんとなくその光景が分かったのか『あー…』と彩は唸る


「ジローの為にも無理はするな」


『分かった…』


跡部の言葉に素直に頷くと跡部の手が頭に触れてきて顔を向ける


「何かあれば俺が力になる…一人で頑張らなくていい」


『………わかった』


頭を撫でてくる跡部に一瞬体を硬くするも一息つき心地よさそうに目を閉じた