あの時はただ感情をぶつけた

その時もナルはこんな表情だったのかもしれい

『ナル、ナル…っ』

手を伸ばしナルに触れようとすると手を引かれ抱きしめられる

ナルの背中に腕を回しぎゅうとしがみつく

『…私、怖かった、ナルが居なくなるんじゃないかって、もう、隣に、いれなくなるって』

「悪かった」

ナルの胸に顔を埋めすすり泣きを繰り返す彩にナルは頭を撫でながら謝る

しかしその表情は和らぎ声音も柔らかい
目の前の彼女を愛おしそうに抱きしめ頭にキスを落とす

それに気づいた彩は背中に腕を回したまま顔をあげれば優しい顔のナルと目が合いどちらともなくキスをする

『皆にもお礼言わなきゃ』

キスの後、そっと離れる彩の言葉にナルは事務所内が異様に静かなのに気付く

彩の手を握ったまま応接間から出るも誰も居ない

給湯室に行けば置き手紙が

“仲直りしたか?俺達はちょっくら飯食いに行ってくる。”

応接間に戻るのも気まずかったのだろうぼーさんの提案で出たのだろう

それが分かった二人は顔を見合わせ小さく笑った


その後、彩達もご飯に行くことになり外に出る





「あ、ナル達だ!おーい!」　

前方から聞こえてきた声に顔を向ければ麻衣が大きく手を振っている

それに気づいた彩は手を振り返す

ぞろぞろとこちらに来るいつものメンバー

「その様子じゃ仲直りしたみたいだな」

ぼーさんの視線の先には繋がれた手

『皆ありがとう』

微笑みながら言えばぼーさんに頭をガシガシと撫でられる

「俺達はほとんど何もしてねぇよ。今回の功績は麻衣だ」

「元はと言えば私が彩のこと紹介したからこんな事になっちゃったんだし…」

『あの写真も大変だったでしょ』