「物理的に、ってなによ」


綾子の言葉に鞄からビニール袋を取り出し見せる


「なんだこりゃ」


『《携帯》』


「「「は、はぁ?!」」」


どうしたらこんなになるんだ、というほどに粉々になった金属の固まり

彩と銀の言葉に全員が目を見開き口をポカンと開けナルもその惨状に眉を潜める



『いやぁ…ちょっと任務でへましちゃって…』


あはは、と乾いた笑いを零す彩


『おかげで時間取られて乗る予定だった高速バスは乗れないし連絡も取れないし…途中公衆電話見つけて…あ、朝から電話してごめんね、真砂子』


「問題ないですわ…驚きましたけど…それにしてもナルには連絡しなかったんですの？」


『そう思ったんだけど時間切れ…近くにお金崩す場所もなくて』



唯一覚えていた番号が真砂子でダメ元でかけたが出てくれた為、事情を説明した後すぐに時間切れとなってしまい、小銭もないため早々に帰らなければ、とタクシーに乗り込んだのだ


『バスを乗り継いで帰っても良かったんだけど早く帰りたかったし』


《タクシーのおっちゃんに無理言って長野から東京まで飛ばしてもらったの》


バスだと場所によっては夕方以降走ってない場所もあり何時間も空く可能性もある

なのでたまたま通りかかったタクシーを止め連れてきてもらったのだ


「まったく…よかったわよ…本当」


『？』


綾子の安堵した言い方に彩は首を傾げれば綾子の代わりにリンが話を始まれば事の重大さに気づき彩も目を見開く

時間通りにあのバスに乗っていたら巻き込まれていた事は間違いないだろう

たとえ自分に力があろうと関係なく最悪死ぬこともある

それを考え目を細め目の前の麻衣の頭を撫でると泣きそうな麻衣は彩に抱きつく


『心配かけちゃったね、ごめんね』


「よかったよ～」


『皆もごめん、心配かけて』


「ホント、心配かけやがって〜」


彩の言葉にぼーさんは苦笑を浮かべ近づいてくると彩の頭をぐしゃぐしゃと撫で彩は思わず笑ってしまい、それを皮切りに事務所内に笑いが溢れた

ナルとリンは顔を見合わせ苦笑を浮かべればそれぞれの部屋に入っていった

そんないつもの事務所の様子をニコニコと見ていた銀は時計を見て彩を見る


《彩さん彩さん時間いいの？》


銀の呼びかけに彩はキョトンとするが時計を見てあ、と呟く


「なにか予定があるんですの？」


『携帯どうにかしなきゃ』


持っているのが１台しかないためこれがないと不便なのだ

それを伝えれば納得したように全員が頷いた


その後、ぼーさん達はご飯に向かうということで今一度謝罪と感謝を伝え見送れば所長室をノックをし声をかけながら中に入る


『ナル、入るね』


入ったと同時に身体が温かいものに包まれそれがナルに抱きしめられた温もりだと分かれば嬉しそうに背中に腕を回す


「おかえり」


『ただいま…心配かけてごめんね』


まったくだ、と抱きしめられる腕に力がこもった事に彩は小さく笑いナルの背中を叩く

そうすれば身体を離されじっと見つめてくる


『？』


ん？と首を傾げれば僅かに眉を上げ頬を撫でられる


「怪我は？」


きっと携帯の原型が留めてないのとへました、ということを言っているのだろう


『怪我っていう怪我はしてないよ…大丈夫』


任務が終わったと思って携帯を取り出した瞬間に物の怪が突っ込んできて咄嗟に携帯から手を離し祓ったものの携帯が見るも無惨な状態になってしまったのだ

彩の言葉に安堵の息を吐いたナルは頬に唇を寄せキスをされ彩は擽ったそうに目を細める


『…これから携帯買い替えてこようかと思うんだけど一緒にいく？』


「ぼーさん達は？」


『ご飯。麻衣はリンさんに言ってから銀も連れて行ったし…携帯ショップにだけどデートのお誘い』


「いく…そのついでにご飯でも行こう……あと、せめてここの電話番号だけは暗記しといてくれ」

『分かった…ナルの電話番号も暗記する』


理由はなんであれ彼女ならのデートの誘いに即答するナルの続いた言葉に彩は小さく笑い頷いた