これ以上ないほど暗い雰囲気の中、カランと軽い音をたて扉が開き「お邪魔しますわ、」と入ってきたのは真砂子で全員の視線が一気に集まったことと事務所の雰囲気に思わず立ち尽くす


「…な、なんですの」


「真砂子…」


泣き腫らしたような目で見てくる麻衣にただならぬ事態が起こったのかとぼーさん達に顔を向けるがこちらの表情も暗い


「…実はな…」


ぼーさんから今朝のニュースの話を聞き納得したように頷く


「…そのバスに彩が乗ってるかもしれなくて…電話も繋がらなくて…」


再び麻衣の声が震えそれを綾子が支える


それをキョトンとした表情で見て納得したように真砂子は口を開く


「そういうことですのね…それでしたら」


真砂子が言おうとした瞬間大きな音をたてて扉が開く

全員が驚いてそちらを見れば待ち続けてきた人物が黒蝶の姿のまま息を切らして立っていた


『つ、ついた…』


疲れたぁ、と荷物を置いた彩は驚いて自分を見てくるメンバーにひらひらと手を振る


「「「彩？！」」」


『え、ぁ、ぅん…私だけど…うわっ』


何故か突進してきた麻衣に押し倒されペタペタと触られる


《じ、嬢ちゃん、ど、どうしたの？》


いきなりの事で後から入ってきた銀は目を丸くする

彩も同様で目を丸くし麻衣を見るが当人は泣きながら彩に触れている


「い、生きてるよね？怪我はしてない!?」


『…生きてるしどこも怪我してないよ？』


麻衣の頭を撫でながら言えばよかった〜と泣き崩れてしまいどういう事だと困ったようにぼーさん達を見る

しかし麻衣同様に安堵したようなため息を吐かれ彩の頭には？ばかりが飛ぶ


「彩」


『ん？』


ナルに呼ばれ笑顔で顔を向ければこちらもため息を吐く

そんな反応をしてくる面々を見て困惑する彩に苦笑を浮かべたリンに呼ばれ顔を向ける


「彩、ひとまず仕事お疲れさまでした。無事で何よりです」


『ありがとう…色々あって遅くなったけどね…無事、ってなにかあったの？』


彩の言葉に朝のニュースは見てないのですか、とリンに聞かれ首を振る


《見れる状況なかったからねぇ》


銀の言葉に乾いた笑いを浮かべる


「何度も携帯に連絡したんだが…今まで気づかなかったのか」


僅かに怒っている口調で言うナルに困ったように眉を下げる


『あ、そうなの…？ごめん、物理的に携帯見れなかったのよ』