『…………』



ゆっくりと彩は目を開ける



ここは…病院…か



まぁ、そうなるよね…



自重気味に笑うと節々が痛み顔を歪める


目が開ける事も億劫で再び目を閉じるが



「…彩」


愛おしい人の声がする


再びゆっくり目を開け声がした方に顔を向けると自身の手を握りこちらを見てくるナルの姿


「彩…」


自分を見る姿が記憶喪失前のナルと被り目を細める



『…夢…』


なんて嬉しい夢だろう


彩は目尻に涙を溜める



「夢なんかじゃない」



そっと彩の涙を指で掬われる


「彩、忘れて悪かった…」


『…思い出して、くれたんだ…』


良かった、と微笑む彩にナルも微笑みで返してくれる


「…とりあえず、彩が起きたことをみんなに伝えてくる…１週間も目を覚まさなかったんだ」


ナルの言葉にそんなに、と呟く
どうりで身体が重いわけだ…ナルがナースコールで医師を呼びかけつけてくる看護婦達と入れ替わりでナルは出ていく


ベットの背を上げ少し話をしたあと安静にするよう言われ頷く

『(銀、)』


心の中で呼びかければすぐに気配が近付き姿を現す



《彩！〜っ彩》


ベッドに突っ込んできた銀の涙声に彩は銀を抱きしめる


《守ってあげられなくてごめんね、目が覚めて良かったよぉ》


『銀のせいじゃないでしょ。ごめんね、心配かけちゃったね』


毛並みを撫でながら言えば擦り寄ってくる銀
彩は段々眠気が襲ってきて目を閉じる



『…私は、もう大丈夫…次、起きたら皆に怒られるなぁ…また、無茶して、って…』


怖いなぁ、と小さく笑いながら寝息をたて始めた彩の頬を尻尾で撫でればその場で身体を伏せた


《…そうだよ。心配かけたんだ、皆にちゃんと怒られてよね…自分がどれだけ想ってくれている人がいるのか…》