彩が中に入るとヒンヤリとした空気が彩を出迎える


玄関の真正面に階段があり辺りを見渡す


入ったときから視線が自身の後ろから感じる


《いるねぇ…》


『いるねぇ…』


チラリと後ろに視線をやるがすぐに消えてしまう


『…少し見て回ろう』


彩が1階部分をくまなく見ていくが何もなく、次に階段を上がり一つ一つの部屋を見て回る


《彩…ここ》


一つの扉を開けるとそこは子供部屋だったのか小さなベッドと箪笥


机の上の写真立てを見れば依頼主と小さな女の子、それに大型犬が一緒にいい笑顔で写っている


『依頼人…子供がいるって聞いた…？』


《んーん、聞いてない》


『だよねぇ…』


これはもう少し依頼主に話を聞いた方がいいかもしれない、と顔を上げ写真立てをポケットに入れる



グルル



ふいに犬の唸る声が聞え振り返ると大きな犬がこちらを見て唸っている


『…お前…』


ｱﾉｺｦﾄﾞｺﾆﾔｯﾀ


《…あの子?》


ｵﾏｴｶﾞ、ｵｲﾀﾞｼﾀﾉｶ


ドスドスと犬がこちらに歩くたび空気が重くなるのを感じる


『…お前が言っている子はこの写真の子？』


彩が写真を取り出せば犬が纏う靄が濃くなる


ｵﾏｴｶｧ…ｵﾏｴｶﾞｱﾉｺｦﾄﾞｺｶﾆﾔｯﾀﾉｶ
ﾄﾞｺﾆﾔｯﾀｧｧｱ


『っ』


《彩！》


急に突進してきた犬に思わず反応が遅れ吹っ飛ばされる


ｶﾞｯｼｬｰﾝと大きな音を立てて調度品に身体をぶつける


銀が慌てて一鳴するとｸｸｸと笑い消えた