その後はナルが無事に退院し、彩を忘れてしまったこと以外変わらない日常に戻っていった


彩も普段通りにバイトに行きリンの資料整理やお茶くみ、ぼーさん達と騒いだり


変わったことと言えばナルを渋谷さんと呼ぶことになったこと。最初こそリンや麻衣は彩がナルと仕事の話をしてるときに心配そうに目線をよこすも大丈夫、と微笑むことで返した




「ということで、明日から依頼に入るからそれぞれ用意しといてくれ」


退院してから約３ヶ月後にきた依頼
全員参加でナルの言葉にそれぞれが頷き解散となる


「あ、彩。これから飯でも行かね？」


『いいの？行く行く。麻衣達は？』


ぼーさんの誘いに笑って答える彩にぼーさんの表情も緩む


「私明日の用意全くしてないから今日は遠慮しとく！」


「私も行きたいのですが人と会う予定があって‥」


麻衣がごめん、と手を合わせ真砂子も首を振る
綾子とジョンも行かない、と返事を返す


「んじゃ、今日は俺と彩の２人だな…なに食いたい？」


何でもいいよ、とぼーさんと会話しながら帰り支度をしていればその光景をチラッとナルを見るがすぐに所長室に入っていった














あの彩という女がどうも目に入る


僕はどうやら彼女だけの記憶を無くしているらしい
　

僕が入院した時にリンが連れてきた
知らない女がいて追い出すよう言うがリンからは仲間だと言われた


それに少しだけイラッとしたが自己紹介をしてきた女を見ればやはり見覚えがない


一通り聞けば興味がなくなり目線を外すと一瞬寂しそうな目をした彼女


その光景が嫌に鮮明に写った



ただ彼女の仕事ぶりは尊敬に値する
言っていた黒蝶としての仕事でも事務仕事にせよ本気で取り組む姿勢は好ましい


任務での人とのコミュニケーション能力、実力、どれをとっても目を見張るものがある


ぼーさん達とも仲は良好で度々ご飯にも行っているようだ


皆、彼女のことが好きだという


包み込むような優しさ、任務に取り組む凛とした姿、惹かれる要素はあるのだろう



ただ…僕と話してるときは何故か一線を引いてるように思える


それとなくリンに聞けば驚かれながらも気のせいだと言われた


先程もぼーさんとご飯に行くことになった彩の笑顔は僕に向けてきたことは、ない


…なぜ、こんなにモヤモヤするのか…



僕には分からない