中に入りベッドで上体を上げているナルがいる


その姿に少し安堵するのと同時にこちらを見たナルに違和感を覚える


「ナル、調子はどうですか？」


「問題ない。ぼーさん達もまだ居たのか」


「そりゃぁ、なぁ…」


頭をかきながら言えばチラリと彩を見る


その視線の動きにナルも彩の方に目を向ければ目を細められる


それを見て思わず真砂子の手を強く握る



「…リン、部外者を入れるな」


『っ、』


冷たい視線と目が合い息を飲むとリンが庇うように彩の前に立つ


「ナル。彼女も私達の仲間です」


「麻衣の他にも雇っていたと？」


「そうです。いま、ナルはその記憶は消えていますが」


リンが言った辛いことはこれだと納得する
今のナルは彩限定で記憶がなくなっている


以前、彩も短期間だが記憶喪失になっていた時があった…なるほど…これは、きつい


リンの背中を見ながら唇を噛み締め俯く
心配そうに見てくる真砂子やぼーさん達


なんで、ナル…私だけ忘れちゃったの…


《(彩…)》


頭の中に銀の言葉が響くと一度深呼吸をし顔を上げリンの服を引っ張る


振り返ったリンは心配そうに見てくるが彩は微笑み首を振る


…大丈夫


そう口パクで伝えればリンの横に立ち頭を下げナルを見て微笑む


『ナ…渋谷さん…自己紹介しておくね。私は花岡彩。陰陽師。麻衣と同じく事務員兼調査員としてお世話になってます…後でリンさんに聞いたら分かると思うけど黒蝶って違う仕事もしてるから参加できないこともありますが』


よろしくね、と微笑むもナルは表情を変えずそうか、と一言だけ言い彩から視線を外すとなにやらリンと話はじめた


彩がナルの事を渋谷さんと呼んだことに麻衣達が目を見開き口を開こうとするも目線で止め首を振った















その後、少しだけ麻衣達と話し家に帰ってきた彩


家に入り寝室に行けばそのまま倒れ込み枕に顔を埋める


《彩、大丈夫？》


『大丈夫じゃない…』


呟くと同時に携帯の通知が何度か鳴り見れば真砂子達でメールに目を通せば銀と同じように大丈夫か、きっとすぐ戻る、等といった心配してくれてるメールで彩は涙で目が霞んでくる


『っ、…』


《彩》


銀はそんな彩のそばに座れば引き寄せられる身体
ぎゅうと銀の身体を抱きしめ静かに涙を流した


…ナル…