『っ？！』


彩は目を開けると何故かそこはまだ水の中

今度は息も出来ず先程とは違い濁っていて周りが見えない。


『(なんで？！部屋に居たよね私！)』


そんな状況にパニックに陥るも辺りを見渡しとりあえず上に向かう

水分を含んだ服の重さに眉を潜めるも地上に向かい足を動かす


『…っ、ぷは』


やっとのことで水面に上がり疲れた身体を叱咤しながらそこから辺りを見渡す

少し遠くの方にコテージが見え、ため息を漏らすと再び自分の場所を確認し、先程ジーンが示した場所を一度見ると目を閉じ、少しの間そうしてから地上に向かって泳ぎはじめた


「え…ちょっ、彩何してるの！？」


地上に近づいてくると急に麻衣の声が届き泳ぐのを止めれば苦笑を浮かべ手を振る

ずいぶん離れているが麻衣の声に反応したであろう他の客がなんだなんだと集まりはじめる。

その中には真砂子や綾子の驚く姿も見える


『やっちゃったなぁ…』


《やぁ、彩。海水浴？というかボク部屋の前にいて出てきてもないのに此処に居ることが凄くびっくりなんだけど？》


小さな声でぽつりと呟くと再び泳ぎはじめるが突如として銀の声が聞こえ顔を向けると何故か隣で泳いでいる


『いや、私もびっくりしてるんだよ。占じてたらジーンに会って目を開けたら水底だからね』


何がなんだかさっぱりだと告げながらも必死に手を動かす


《なにそれ。…深く入りすぎたんじゃない？》


『かもね…』


苦笑しながら地上近くまでくれば麻衣がタオルを持って待っており、陸に上がれば麻衣からそれを受け取り髪を拭う


「彩…何をしてましたの…しかも服を着たまま」


駆け寄ってきた怒り気味の真砂子と心配そうに見てくる麻衣、呆れたような綾子を見て彩は小さく笑う

まさか分からないとは言えず


『暑くって。湖見てたら泳ぎたくなっちゃったのよ。けど水着もないしいいやって』


「確かに暑いけど危ないよ」


『ごめんごめん。』


彩の言葉に他の野次馬もなんだ、と離れていく

まぁこんな格好(袴)だからナル達が色々手配してるのを見て何かあったのだと思ったのだろう

綾子も気を付けなさいよ、と言ってコテージまで戻っていく


「彩…」


麻衣と真砂子が心配そうに見上げてくるのを見て二人の頭をグシャグシャと撫でれば大丈夫、と微笑み真砂子に顔を向ければ麻衣に見られぬよう目を細める

それに一瞬悲しげに顔を俯かせた真砂子の頭をポンポンと叩いた


『じゃあちょっとコテージ戻るね。着替えなきゃ。タオルありがとうね』


「あ、うん」


麻衣が頷き彩はコテージに向かおうと背を向けた瞬間


『……………』


《あーぁ》


騒ぎに気づいたのか麻衣辺りが知らせたのかは分からないが遠くから怒ったようなナルと呆れたようなリンと目があった