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脹相
早ければ今日には高専に着くが、難しければ山の中で一泊だな

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悠仁ホームセンター寄って車中泊に備えるか……伏黒から連絡が無いな、高専に着いたのかも
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脹相
そうだと願おう

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今日もほとんど車移動だろう。ああ、もうすぐ二人きりの旅も終わりかあ、なんて俺は呑気なことを考えていた。
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悠仁(高専でしばらく一緒に生活するかもしれんし、そうしたらめちゃくちゃ猛アプローチしてみよう)
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悠仁(あ、でも男が駄目だったらどうしよ……分かった時点で告って潔く諦めるか……)
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悠仁(やだなあ、やっぱりずっと一緒に居てえな〜)
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脹相
……悠仁、聞いてるか?

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悠仁え、ごめん、何だっけ?
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脹相
ホームセンターで調達する必要な物をメモしておいて欲しいと……大丈夫か?さてはアレだな?好きな人が心配なんだな

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悠仁う、ん……まあ、そう、かなあ?
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脹相
こんな世界じゃ、いつどうなるか分からんからな。気持ちはハッキリ伝えておくべきだ。俺は応援してるぞ

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悠仁おー……うん、あんがと……
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脹相
悠仁に見初められるなんて本当に良い子なんだろうな。俺が女なら悠仁を選ぶぞ、自信を持て

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それどういう意味で言ってるの?と詰りそうになってぐっと堪える。脹相に悪気は無いんだ。分かってる。
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車は順調に走行した。ホームセンターに到着したが、初日の時のように店内は少し荒らされ、帰り際にやはり戦闘になる。
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脹相
悠仁、長引くと店の奥から湧いてくるからいい所で切り上げるぞ!

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悠仁りょーかい!
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脹相は刃渡りの長いものを手に入れたらしく、戦闘が幾らか楽になったようだ。俺もグリップのあるグローブを工夫して、ようやく拳で戦えるようになった。
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脹相に向かって行こうとしている感染者の頭に一発。グローブが体液を吸うのが難点だけど。防水の、あるかな。
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脹相
素手か?!すごいな

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悠仁いや、グローブにナックル挟んでみたんだけど、滑るし汚れるからもうちょい改良が必要かも
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脹相
物理強度を上げただけだろ、ほぼ素手じゃないか

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悠仁脹相だってナイフホルダーなんて見つけちゃってさ
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脹相
便利だぞ?

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俺たちは戦闘力ばかり上がっていた。
荷物をまとめてホームセンターを後にする。 -
道路状況はあまり良くなかった。寸断までとは行かないが、立ち往生してそのまま乗り捨てられたか、持ち主が変異してしまったか、そんな車がままあった。
なんとか避けて通っても感染者が居て邪魔をされたり、非感染者が襲われるタイミングに出会ってしまったり、スムーズには行かなかった。 -
脹相
今日は車中泊だな

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悠仁ちょっとキャンプ用品持ってきたから、なんか煮炊きしようよ
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脹相
屋外に居るのは少しの間だけだからな

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悠仁おう!
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山間にはキャンプ場がいくつかあり、そのうちの開けた場所を選んで車を停めた。外は少し冷える。
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脹相
電気は通ってないな……ランタンがあったか

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悠仁懐中電灯もあるよ
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俺たちは車を降り、バーナーコンロでお湯を沸かしてカップ麺を作った。
キャンプチェアを出して二人コンロを挟んで向かい合わせに休息をとる。 -
悠仁カップ麺なのになんかめちゃくちゃ美味い
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脹相
外で食べると違うな

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見上げると満天の星空。街はあんなに悲惨だったのに、世界はこんなにも綺麗だ。それは目の前の人も同じ、戦う姿はかっこいいのに、ふとした笑顔が綺麗な人だ。
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脹相
俺の顔に何か付いてるか?

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悠仁あ、いや……もしこんな世界になって無かったら、今頃何してたかなって
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脹相
今日は平日だから、仕事をして家で晩酌していただろうな……何本か空けて、壊相に飲みすぎるなと怒られるんだ

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悠仁想像できる。やっぱりいいな、兄弟
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脹相
悠仁はもう弟みたいなものだ

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悠仁あ、うん……
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悠仁(弟認定されてしまった……ダメルートじゃん……)
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脹相
壊相も血塗も、悠仁みたいな弟が居たら可愛がるだろうな。小遣いがたくさん貰えるぞ

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悠仁それは甘やかしすぎだろ
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脹相
そうか?欲しいものとか、悠仁が喜ぶなら皆何でも買うだろうな

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悠仁脹相も?何でもくれる?
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脹相
俺に用意出来るものであればな。でも……そうか……悠仁ならきっと誰にでも可愛がられるだろうな、彼女もきっと

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悠仁それさ、1個訂正していい?
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脹相
うん?

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悠仁俺が好きな人は女の子じゃなくて男なんだよ
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脹相
!
そうか、決め付けていたな。悪かった
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悠仁いや、怒ってる訳じゃないんよ。
脹相、俺の好きな人が気になってるみたいだから -
脹相
興味があるんだ。悠仁はどんな人を好きになるのかと

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悠仁えーなんで?
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脹相
……心配だからな、世の中変な人間も居るだろう?幸せになってほしい

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もし脹相とお付き合い出来らすんげえ幸せだろうな。こんな風に毎日笑いかけてくれるんだぜ。手を繋いで水族館行ったり、買い食いしたり、映画観たり……。
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悠仁普通に、デートがしたかったな……元の世界で
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脹相
悠仁……きっと、今の世界にも、楽しいことはあるさ

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悠仁そうだな……三日間、何だかんだ楽しかったし
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脹相は俺の言葉の意味を掴み損ねて首を傾げている。可愛い。好き。想いが口から出そうだ。
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悠仁ちょっと、便所行ってくる!
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脹相
懐中電灯を持て、キャンプ客もやられているようだから気を付けるんだぞ。何かあれば

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悠仁叫ぶから大丈夫だよ、行ってきます
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一人になって頭を少し冷やしたかった。よく考えたら脹相だって普通に女の人を好きになって家庭を作って子供が出来て、と、そういう幸せだってあるかもしれないのだ。脹相が俺の幸せを願うように、俺も脹相の幸せを邪魔したらいけないよな。と思う。
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悠仁(でも、何もしないで諦めるのなんて無理。高専着いたら絶対好きだって言うんだ、俺)
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浮いたり沈んだり。楽しくて切ない。なるほどこれが恋愛ってやつか。良かったな。脹相と出逢えて。
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さて、明日も早めに出発出来るようにそろそろ寝ないと……
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ガサ
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車を停めていた場所に戻り、脹相を視認すると同時に俺は地面を蹴っていた。
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脹相の真後ろに口を大きく開けた感染者が居た。脹相はスマホを見ていて気付いていない。
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ああ、しまったな。グローブは車だ。蹴りも間に合わない。
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悠仁痛っ!!
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脹相
!!!!??

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悠仁っこの!!
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俺は脹相と感染者の間に割入り、自分の腕を噛ませた。そのまま腕を振り上げて腹に一発蹴りを入れる。吹っ飛んだ体を追いかけて頭に回し蹴り。
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とりあえず脅威は去った。
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次の脅威は俺だ。
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脹相
悠仁!!

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感染者は顎の力が尋常ではない。振り上げた際に皮膚と肉の一部も持って行かれた。俺の右腕からボタボタと血が落ちる。
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脹相
悠仁……そんな……

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悠仁脹相、ナイフ持ってたろ?用意して
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脹相
……いやだ……

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悠仁頭やってって、お願いしたじゃん……
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脹相
噛まれるのは、俺が先だと……

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ああ、嫌だなあ。俺今、最高にかっこいいはずなんだけど……脹相が泣くのは、嫌だなあ。
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脹相は涙を零しながら俺に駆け寄って来た。
フラつく俺の体を抱きとめて、横にして抱き締めてくれた。
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おかしいな、出血したら体は寒くなるんじゃないの?めちゃくちゃ熱いんだけど。
心臓がバクバク言ってる、駄目じゃないかな、これ。 -
悠仁脹相……俺、の頭、ちゃんと刺せよ
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脹相
いやだ、悠仁……駄目だ、こんな……

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脹相の涙がぼたぼた落ちてきて俺の頬を濡らしていく。
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最後に、言ってしまおう。
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悠仁俺の、好きな人……
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脹相
ダメだ、自分で伝えるんだ……悠仁……

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悠仁うん、俺、脹相が好き
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脹相
????
俺が……?
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気持ちが悪い。内蔵がひっくり返りそうだ。呼吸が出来ない。体中が痛い。でも、俺……。
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悠仁脹相が好きだ、……一緒に居られて、嬉しかった……
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脹相
悠仁……っ

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悠仁なんでも、くれるって……へへ……ヤりたかったなあ……
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脹相
言った!俺はなんでもやると言った!尻なら幾らでも貸してやる!だから逝くな!ダメだ、悠仁……っ

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悠仁嬉しい……大好き……
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脹相
悠仁……、悠仁っおい、……悠仁……っ

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力なく地面に投げ出された悠仁の腕。脹相の背中は震えていた。
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