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脹相
虎杖、そろそろ起きろ

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悠仁ん……あと5分……
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脹相
まったく……虎杖悠仁、起きないか

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悠仁ん〜悠仁って呼んで……
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脹相
悠仁、置いて行ってしまうぞ?

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寝ぼけながらちょっと巫山戯ていたら、脹相の声が耳元で聞こえたから飛び起きてしまった。
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悠仁オハヨウゴザイマス
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脹相
よし、元気だな

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*
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最近のスーパーやコンビニは衣料品も置いてあって有り難い。感染者と戦って汚れた服も着替えられて、飯もたくさん食べて寝たし、めちゃくちゃ元気になった。
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悠仁(あと今日も脹相が好きだ!)
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世界は終末だけど、好きな人が居るってこんなに楽しいのか。今日は髪を後ろで纏めている。似合うなあ。
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脹相
歩きながら車を探すか。昨日のでナイフはダメになったから途中で何かあればいいんだが

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悠仁だな。食料とかも補充しつつって感じだな……
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悠仁伏黒から返信来てる。みんな無事だって。バスで迂回しつつ避難者を乗せてるみたい
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脹相
そうか……良かった……壊相は俺より体が大きく強い、頭もいいから正しい選択をするだろう。
血塗は柔軟だ。人見知りもしないし避難者は安心するだろうな
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悠仁伏黒も賢いやつだぜ。冷静だし、いざってとき頼れるんだ。釘崎は決断力があるし、意外と周りをみてたりするんよ
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脹相
そうだな、あいつらなら大丈夫だ、無事高専まで辿り着けるさ

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悠仁俺たちも大丈夫だよ、絶対!
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スーパーや商業施設に立ち寄りつつ、俺たちは車を探した。放置されているものを覗いてみるがほとんど鍵がかかっている。
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悠仁映画とかで鍵無くてもエンジンかけてるの観たよ
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脹相
最近の車じゃそれは難しいな

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何台か、感染者が閉じ込められている車を見つけた。その内の一台に感染者が二人、運転席と助手席に乗っている。その後部座席のドアを、思い切って空けてみると施錠がされてなかなった。
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悠仁脹相!
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脹相
二人か……さっきサバイバルナイフを見つけたから、それでいけるか

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二人は夫婦だろうか。買い物に来ていたか、逃げて来たか……。伏黒の話では、もう死亡している状態だと聞いた。楽にしてあげよう、とありふれた台詞で片付けてしまうのも烏滸がましいなと思う。
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悠仁……もう体も眠っていいよな。俺たちに車、貸してください。仲間のところに帰りたいんだ。
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俺は、無駄と分かっていても、助手席に乗っている感染者と目を合わせて語りかける。
感染者は俺に噛み付こうと必死に大きく口を空けて窓にぶつかってきた。
俺は車のドアを開けた。 -
*
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悠仁もし俺が噛まれたら変異する前に頭やって欲しいな
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脹相
噛まれるのは俺が先だ、悠仁はまだ若いんだ、生きろ

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悠仁……悠仁って
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脹相
朝言ったじゃないか、虎杖より呼びやすいな

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悠仁なんか、慣れなくて恥ずかしいな……
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悠仁てゆうか、言ったじゃん、俺が脹相を守るよって
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脹相
俺も悠仁を守る。状況にも寄るが、なるべくお前が生き残れるようにした方がいい。好きな人が居るんだろ?

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悠仁それは……っ
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悠仁(死ぬなら、好きな人守ってかっこよく死にたいじゃん)
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俺たちが乗った車は乗用車だ。旅客機の墜落で道路が寸断されているので、一旦東京を出て迂回する。隣県の逆ルートから高専に向かうつもりだ。
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悠仁どのくらいかかるかな
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脹相
夜は走りたくないな、どこかでもう一晩過ごそう
この先の道路状況も分からんし2.3日は見た方がいいかもな
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悠仁運転疲れない?
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脹相
慣れてる

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こんな状況じゃなければドライブデートじゃん。俺は内心めちゃくちゃ浮かれている。さっきどっちが死ぬかみたいな話しをしたばかりなのに。
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悠仁ハンバーガーとコーラとポテトが欲しいな
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脹相
いいな、また夜は温かいものを食べよう

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悠仁うん、ビール飲む?
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脹相
安全な場所ならな……一本だけな

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悠仁500缶な!
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こんな調子で俺たちは目的地を目指す。
東京を出て郊外になると田園風景が広がる。あまり人気はないが、たまに走る車や、遠くに彷徨っているであろう感染者を見つけた。どこに行くんだろう。 -
悠仁……元の世界に戻るかな
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脹相
何か決定的な対処法が無ければ難しいかもな

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悠仁どうなんるんだろう……
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脹相
共生していくか……どのみち今までの法律は通用しないな

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ネットを見ると、政府は不要な外出を控えるよう声明を出しているが、警察も自衛隊も病院も機能しないのであれば、自分達で何とかするしかないだろう。高専なら自立して生活出来そうな設備も広さもあるけれど、それが出来たとして……
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悠仁(脹相に気持ちを伝えたところで迷惑なだけかも、歳下だし、男だし)
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悠仁そう言えばさ、脹相の好み聞いて無かったな。俺は言ったからさ、聞かせてよ
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脹相
好み……?好きになった人……?

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悠仁そうゆうの無し!顔は?大人っぽい感じ?
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脹相
……??

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脹相は難しい顔で首を傾げるばかり。
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悠仁好きな俳優とか居ないの?歴代の彼女とか
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脹相
向こうから来たことはあるが、俺が好きだった訳では無かったし……

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悠仁え、好きじゃないのにお付き合いしたの?
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脹相
試しに付き合ってと言われて……だが詰まらないと勝手に振られたな

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悠仁うわあ、かわいそ
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脹相
どっちがだ?

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悠仁どっちも
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なるほどな、この感じじゃ脹相と俺の恋愛経験の差なんてどっこいどっこい。猛アプローチしたらワンチャンあるかもしれない。
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本日の宿もモーテルだった。郊外では自発的に閉店したコンビニやスーパーが目立つが、いくつか強引に開けられたような店もあり、俺たちはそこにお金を置きつつ食料を頂いてきた。
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悠仁今日はロコモコ丼です!
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脹相
レンジでここまで出来るとは……悠仁は良い旦那さんになるな

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悠仁焼き鳥もあります!レンチンだけど
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脹相
……!!
あ、有り難い……!!
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今日は比較的平和だった。トイレ休憩に寄った場所で感染者とちょっと戦闘になったくらい。あとはずっと移動だった。
脹相は運転で疲れているだろう。俺が全力で労ってやるんだ。 -
悠仁風呂上がったらマッサージしてあげるよ、運転ありがとうな
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脹相
悠仁にそこまでさせる訳にはいかない

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悠仁俺がやってあげたいんだけど……あ、嫌ならいいよ!
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よく考えたら好きな人の体に触るなんてそんなハレンチなこと軽々しく言うもんじゃなかった。もう彼氏面してる、俺。気を付けないと。
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*
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悠仁(あ〜言うんじゃなかった)
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脹相も変に気を遣った結果、少しだけならとマッサージすることになった。風呂上がりのバスローブ姿の脹相がうつ伏せに寝転がっている。
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シャンプーの匂い。肩幅があって見事な逆三角形の背中、尻が思っていたよりでかい。脚も肉付きがよく関節はキュッと締まっている。見事に男らしい体なのに、これはなんと言うか……。
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悠仁(なんでこんなにえっちな体してんの……何かやば、勃ちそ……)
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深呼吸をして脹相の体に触れる。マッサージをしてあげたかったのは本心なので、そちらに集中するも自分の体は正直だった。
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悠仁……お、終わり、です……
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脹相
ありがとう、このまま眠ってしまいそうだ。悠仁も乗り放しで疲れたろう、俺も……

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悠仁大丈夫!あ!ちょっと便所行ってくる!
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俺はすぐに脹相に背中を向けてトイレへ駆け込む。昨日もだったけど、一緒のベッドで眠れるなんて、なんてラッキーなんだろう。いきなり童貞卒業は無理かもだけど、抜き合いとかなら……いや何考えてるんだ俺。
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悠仁(脹相は俺のことどう思ってるのかな?未成年だから守らないといけない?弟みたいに可愛い?)
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なんとか愚息を落ち着かせ、トイレから出ると脹相がベッドのヘッドボードに凭れスマホを見ていた。
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悠仁連絡とれた?
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脹相
メッセージを送っておいた。写真を見ていたんだ

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悠仁俺も見ていい?
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脹相はスマホの写真データを見せてくれた。幼い頃の三兄弟だ。
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脹相
あまり良い家庭環境じゃなくてな、三人で生きてきた……壊相も血塗も可愛いだろう

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悠仁うん、脹相も可愛い
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脹相
悠仁は優しいな。……二人には生き延びて幸せになって欲しい。苦労させたからな

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悠仁二人はきっと脹相にも幸せになって欲しいって思ってるよ
俺も親は死んじゃってずっとじいちゃんと二人だったけど、じいちゃんも死んじゃって。兄弟が居るのはいいよな -
脹相
悠仁……

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悠仁あ、でも俺悲観してる訳じゃないからな?!先生面白いし、友達も好きだし、楽しいんよ!脹相達にも出会えたし、こんな世界じゃなかったらなって思うけど
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脹相
そうだな……最初は俺も警戒心が強くて、悠仁に冷たく当たってしまったが……お前は本当に思いやりのある立派な人間だと、今なら分かる

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脹相
皆とはぐれて、俺独りならどうでも良くなっていたかもしれん。悠仁が居てくれて良かった

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悠仁へへ、どういたしまして!俺脹相を二人に会わせるから!
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その日も早めに就寝した。脹相が寝付くのを待って、ちょっとだけ寝顔を見てから。やっぱり好きだな。脹相にも俺を好きになって欲しいな。
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