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伏黒
感染者は、ウイルスが体内に入り全身に広がった時点で心肺停止、脳の機能も停止する。実質死亡状態で動けるのは小脳の一部をウイルスが支配し新しい宿主に広がっていく為、寄生した体を操作しているようだ。
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伏黒
と言うのが、ネットの情報や海外の医療関係の資料から得たもので。
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伏黒
あと、これは俺の憶測なんだが、たぶんウイルスは空気感染していて、今無事な人も全てウイルスを持っている可能性がある。
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悠仁空気中に居るってこと?
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伏黒
そうだ。日本全国の報道を見ても、老人ホームや病院でのパンデミックが目立つ。一番気を付けているはずなのに。
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伏黒
ただ、こういう所は死人が出る。怪我だけじゃなく、病死や自然死でも。そういう死体が、恐らく変異するんだ。噛まれていないのに。
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釘崎
じゃあ宿主の生命活動停止や命に関わるような怪我、噛まれたりした場合トリガーになってゾンビになるってことね
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脹相
だから脳を破損させればそれ以上は動けないのか、まとめるのが上手いな

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伏黒はネット回線が繋がるタイミングで、情報を集めていたようだ。相変わらず高専とは連絡が取れないから周りの鉄塔や電波塔がやられている可能性がある。
伏黒は脹相に褒められてほんの少しだけ口角を上げたのを俺は見逃さなかった。 -
壊相
……兄さん、その高専と連絡取れない原因、あれかも
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日が昇り、ホームセンターを出発したバンは早速立ち往生となる。
運転していた壊相が前方を指差すと、噴煙が上がっていた。 -
壊相
旅客機だよ、たぶん旅客機が落ちたんじゃないかな?道路が寸断されてる。墜落する際に鉄塔が倒されたんだね、高専は停電しているのかも
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脹相
迂回しないといけないな……本来ならそんなに遠い距離じゃないんだが……

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バンはUターンをして来た道を戻り出す。しかし少し走った所でバンは大きく傾いた。津美紀姉ちゃんが悲鳴を上げる中、釘崎と抱き合うように振動に耐える。俺たちも投げ出されないよう車体に掴まり、少し耐えるとバンは脱輪して停車した。
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壊相
ごめん、飛行機の破片かなにか踏んだみたい。パンクした
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脹相
大丈夫だ、別の車を探そう

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壊相は車関係の仕事をしていたらしく、代わりのものを探して来る、とバンを降りた。壊相が降りるなら年長者である脹相がバンに残り、昨日は俺だったので、今度は釘崎がハンマーを素振りしつつ着いて行くと言い出した。体がなまっているらしい。
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釘崎
女だからってナメないでよね
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壊相
頼もしい
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二人を見送ると、動けない津美紀姉ちゃんや血塗をすぐに新しい車に移せるよう準備を始める。
俺はなんだか胸騒ぎがして、旅客機が噴煙を上げている方角を見上げた。 -
脹相
どうした?

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悠仁……あれに乗ってた人達……
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脹相
爆発したか、火災になったはずだ。即死がほとんどだろう、苦しまないほうが良かったんだ

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脹相
優しいんだな

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脹相は微笑んで俺の頭を撫でた。うわ、と変な声が出てしまった。いきなりのスキンシップは心臓に悪いからやめて欲しい。
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悠仁(ドキドキする……!!なんだこれ??)
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悠仁……伏黒、俺病気かも
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伏黒
は?まあウイルス感染はしてるんじゃないか?
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悠仁や、それじゃなくってえ〜……
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津美紀姉ちゃんにしがみつかれた時もちょっと嬉しかったけど、あれがもし脹相だったらと思うと……いや、これ以上は考えないようにしよう。
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移動の準備も終わり、壊相達を待っている間も、やっぱり飛行機の墜落現場の方角が気になる。津美紀姉ちゃんや血塗が外の空気を吸えるようにと、スライドドアやバックドアを開け放しているが、スライドドアとは逆側の車体に背中を預け、そこから真っ直ぐ見える噴煙を眺めていた。
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脹相
水分は補給しておけよ

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脹相は俺たちの様子によく気を配っていた。津美紀姉ちゃんや血塗の体の心配をし、俺たちにもこうやってペットボトルを配ったり、まさにお兄ちゃんだ。
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悠仁……あんがと
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悠仁脹相も疲れてんだろ?
寝てないよな? -
脹相
バレたか

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悠仁やっぱりな。車乗り換えたらさ、少し寝なよ。俺も伏黒も、釘崎だって結構動けるんだぜ
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脹相
そうだろうな。子供だと思っていたが、頼りになる

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悠仁おう。脹相も強そーだし皆を守ろうとしてくれてるけどさ、脹相を守れるのはこの中じゃ俺だけかなって……ごめん、何言ってんだろ……
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脹相
なるほどな。流石に俺も虎杖みたいに蹴りだけで頭は潰せないからな……お前は強いぞ

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悠仁え、いま子供扱いしたよな?!
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脹相
はは、違う違う

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顔が熱い。会話が全部空回りしている気がする。
俺はグイッとペットボトルの水を煽る。ちょうどあの噴煙が目に入り、おや、と思う。 -
脹相
……どうした?

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悠仁脹相、見える?あれ……なんか動いてねえ?
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脹相
…………まさか

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噴煙の手間、蠢くのは真っ黒に焦げた人だった。頭部がしっかり残っているから、いわゆる生焼けなのかもしれない。この世の地獄みたいな光景がまだあるのかと、俺は奥歯を噛んだ。
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脹相
いかんな。壊相たちはまだか……津美紀と血塗を支えて何処まで行けるだろう

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悠仁とにかく、二人が行った方向に行くしかねえよな
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俺たちは荷物をまとめて、俺が津美紀姉ちゃんを、脹相が血塗を支えて伏黒がまとめた荷物を持つ。黒焦げの郡団に追いつかれそうになりながら道路沿いに歩いていると、路線バスがこちらに向かってきた。
壊相と釘崎が乗っている。 -
悠仁戻って来た!
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後ろにいたはずの脹相に声をかけ、振り向くと思ったよりもだいぶ後ろにいた。その数メートル後ろにはあの集団。
血塗が足を引きずっているから遅いのだ。 -
バスが停車すると津美紀姉ちゃんを乗せて、すぐに踵を返す。脹相と血塗の元まで走るが、脹相が感染者に体を掴まれたところだった。
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悠仁ちょっと、投げるから
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血塗
え?
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脹相は感染者と対峙してしまった。俺は血塗の体を持ち上げてバスの方面に放り投げる。
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悠仁伏黒!!
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伏黒
!!
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伏黒は血塗の体を受け止め、きれず二人で倒れてしまったが、何とかバスに乗り込んだ。今度は伏黒がこちらに鉄の棒を投げて寄越した。病院のベットだった棒だ。
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脹相は流石にナイフを出して応戦している。俺もまとわりつく人々を蹴散らすので手一杯だ。そんな中、郡団の一部が俺たちを待つバスへと向かっていった。まずい。
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悠仁脹相!バスが!
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脹相
!だめだ、壊相!行け!囲まれるぞ!!

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壊相
でも、兄さん!
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脹相
構わず先に行けと言っただろう!行け!!

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悠仁俺たちはなんとかするから!!行け!!
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壊相
兄さん……
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伏黒
虎杖……
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釘崎
アンタたち生きて帰んなさいよ!!
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バスは走り去った。エンジン音につられだいぶそちらに郡団が流れたものの、最後の一体を倒す頃には日が暮れかけていた。
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悠仁はあ、はあ……
脹相、生きてる? -
脹相
……何とか、噛まれてもいない……お前は

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悠仁腹減った
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脹相
元気そうだな

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脹相
暗くなる前に宿を探すか

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俺はしゃがみこんでいた脹相に手を貸した。脹相はふらつきながらも立ち上がり二人並んで今日の宿を探す。
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