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ハイエースはしばらく走ると、ある場所に停車をした。あたりは日が落ちて真っ暗になっていた。街頭や店頭の明かりはついている場所とそうでない場所と疎らで、ここはまだ電気が生きているようだ。
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壊相
大型のホームセンターなんだけど、駐車場広いし、いいよね?
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脹相
閉店時間はとっくに過ぎてるだろう、店が明るいな

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壊相
中やられてるのかも。物資とか補給しに行く?
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脹相
そうだな、水や身を守れそうなものがあれば……虎杖、着いて来い

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悠仁うん
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伏黒
俺も
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脹相
お前は姉さんの傍にいろ。血塗も頼む

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伏黒
……分かりました
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脹相
何かあれば構わず先に行け

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悠仁(ええ〜俺は?)
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壊相
分かった、気を付けて
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伏黒
虎杖、スマホの回線が入る場所と入らない場所があるみたいだ。災害伝言ダイヤルで五条先生に連絡してみる
メッセージも。もしはぐれても、お前もチェックしておいてくれ。連絡を取り合わないと -
悠仁分かった、充電器とかも探してみるよ
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俺たちは静かに車を降りる。広い駐車場には不自然に停められた車が多々見られ、争いがあった後のようだ。
何台かの車には、変異した人間が閉じ込められていた。 -
脹相
武器は良かったのか?

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悠仁俺あんまり得意じゃなくて。中になんかあるだろうし、車に残ってるやつらの方が必要じゃん
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脹相は俺があげたサバイバルナイフを一本持っている。残りは車に置いてきた。最初の町で、あの若い女性にナイフを突き刺した感覚が今も忘れられない。
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脹相
お前を守りきれるか……虎杖は動けそうだから連れて来たんだが

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悠仁無問題!!その勘はハズレじゃないよ。待つのも性にあわんし
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脹相だって。と見上げる青年の体格はなかなかに立派だ。聞けば仕事が配送関係で、ハイエースはそれに使っていたものらしい。
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ホームセンターの自動ドアのガラスは割れていた。ガラスを踏まないよう慎重に中に入る。電気は煌々とついており、反響した感染者のうめき声が聴こえる。
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脹相
やはり居るみたいだな、気を付けろよ

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悠仁おう。
先にリュックやバックみたいなの探して、充電器や懐中電灯かラジオもあったらいいかな -
脹相
そうだな、電池や災害グッズもあれば、タオルなんかもあればいいのか

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悠仁結構ある……手分けする?長く居る方が危ないだろ
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脹相
本当に大丈夫か?

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悠仁平気。何かあれば叫ぶから。食料が一番重いし最後だろ?そこに集合な
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陳列棚はそれなりにガラガラだった。もう持ち去られたあとみたいだ。俺は感染者の死角に入りながらめぼしいものをリュックに詰めていく。大体入れ終わったところでシューズコーナーを見に行った。
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悠仁ホームセンターなら……あ、あった
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少し長居してしまった、と食料品コーナーに急ぐと、脹相が感染者と対峙していた所だった。
感染者は、体格からは似合わない力で押し寄せてくる。口を大きく開けて、最初の街で見たように、非感染者の喉元や体に噛み付こうとする。脹相ですら、荷物を盾にしているものの押されていた。俺は慌てて持っていた荷物を置くと、「屈んで!」と叫びながら駆け寄っていく。 -
脹相が屈んだのと、俺の回し蹴りで感染者の頭が潰れたのは同時だった。
頭部が不自然に潰れた身体はダラりと地面に倒れ、動かなくなった。 -
悠仁大丈夫か?!
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脹相
ありがとう、平気だ。助かった

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脹相
今の騒ぎで店の奥から感染者が湧いて来たな。行こう

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悠仁おう!
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俺は置いた荷物を拾い上げ食料品を掻き集めてリュックに詰めると脹相に続いてホームセンターの出入口へと急ぐ。
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感染者の足より早かったのか、車に戻る頃には俺達を追いかけて来た感染者たちは目的を失い何をするでもなくフラフラと出入口を彷徨っていた。
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脹相
お前格闘技でもやってるのか

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悠仁いや、別に?でもほら!鉄板入った靴あるじゃん、それにしたんよ!本当はグローブとかがいいんだけど、流石に無くてさ
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脹相
安全靴か…ならナイフは要らないに納得だな

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俺と脹相は手に入れた物資を皆に配った。釘崎はハンマーを所望していたので、それと。
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悠仁あとこれ、津美紀姉ちゃんに、ついでに釘崎も
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津美紀
ホッカイロ?
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釘崎
ついでって何よ
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春とは言え、夜はまだ肌寒い。津美紀姉ちゃんなんてほとんど筋力も無くて寒そうだったんだ。女子は身体冷やしたらいけないと聞くし。
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脹相はホームセンターから何枚か毛布も持って来たようだ。横になって眠るスペースは無いが、安全な場所で毛布にくるまって眠れるだけ有難い。
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俺は長い一日のことを思い出す。ピアスの取れた若い女性、自衛隊に連れて行かれた人、さっきアタマを砕いた人。みんな普通の暮らしをしていただけなのに……
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そんなことを考えつつ、ふと顔を上げると窓の外を見ている脹相が見えた。見張りをしているようだ。
この中では恐らく一番歳上で、弟に対する責任感が強い。流れで押し掛けてしまった俺たちの分まで守ってやらないと、と感じているのかもしれない。 -
先程の感染者、脹相の腕力ならナイフで頭を貫けただろうに、躊躇しているように見えた。たぶん、根が優しいのだ。
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などと考えながら見つめていると、バチッと脹相と目が合った。脹相は眉を下げて、ふっと微笑むと、口パクだけで「寝ろ」と言ってきた。俺は笑い返して口パクで「おやすみ」と伝えた。毛布に頭を突っ込む。心臓がバクバクする。無駄に体温が上がった。
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どうしたんだろ、俺。
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