病院脱出

  • 病院内は人でごった返している。忙しなく行き来する看護士を捕まえて、なんとか伏黒の姉貴の病室まで辿り着いた。

  • 釘崎

    遅かったじゃない

  • 悠仁

    ごめんごめん

  • 伏黒

    あ、姉貴の津美紀。津美紀、コイツも同級生の虎杖

  • 津美紀

    コイツじゃないでしょ。虎杖くん初めまして。大変だったね

  • 悠仁

    初めまして!虎杖悠仁です!3人だったから何とかって感じっす

  • 津美紀姉ちゃんは痩せてはいたものの元気そうに見えた。何でもしばらく植物状態だったところから、最近意識を取り戻したらしく、まだ身体が上手く動かずリハビリ入院中だったのだ。

  • 悠仁

    そんで、どうする?

  • 伏黒

    津美紀が動けるなら高専に連れて行きたい
    この病院はいつ感染者に囲まれるか分からない

  • 津美紀

    まだ足腰が本当じゃないの。足でまといにならないかしら

  • 釘崎

    私たち3人だけなら徒歩でなんとか行けるかもと思ったけど、車や電車が動けばね……

  • 悠仁

    車!大丈夫かも!

  • 伏黒

    本当か?

  • 悠仁

    さっき話してたお兄さんいたろ?車乗ってたんよ、ハイエース?てのかな?

  • 悠仁

    でも弟さん怪我してて、あ、感染者じゃねえよ?で、治療する物資が必要みたいで、取ってくるからって約束したんだよ

  • 伏黒

    大丈夫か?あの人怒鳴ってただろ

  • 悠仁

    二番目の弟さん?優しかったから、俺お願いしてみるよ

  • 津美紀姉ちゃんは馴染みの看護士に事情を話し、治療セットを貰う事が出来た。
    病院は緊急事態の中、重い疾患でなければ出ていく者を引き留めることはせず、津美紀姉ちゃんの退院を許可してくれた。

  • 時刻は夕刻に差し掛かり、支援物資の食料が届き出す。避難者も居るため、パンやおにぎりなんかが貰えたが、俺は思い立って看護士さんに声を掛けた。食べ盛りでもう少し貰えないかと。

  • 悠仁

    あんまり待たせても心配だから、俺一回お兄さんのとこ行くよ

  • 伏黒

    分かった、気を付けろよ

  • 俺は治療セットや食料を持って準備をしたところでフロアの方から悲鳴が上がる。

  • 釘崎

    嘘でしょ、病院よ!?

  • 悠仁

    怪我人は絶対入れようとしなかったのに

  • 伏黒

    もしかしたら……いや、出る準備するぞ、そのハイエースに乗せてもらおう

  • 悠仁

    あ、待って…ん〜よし

  • 俺は病室のベットのパイプを引き抜き何本か伸して棒状にしたものを伏黒と釘崎にそれぞれ持たせる。

  • 釘崎

    アンタどんどん人間離れするわね……

  • 悠仁

    必要だろ?俺は伏黒の姉ちゃん抱えて行くよ

  • 伏黒

    頼む
    止まると危ないからな、出口まで走るぞ

  • 釘崎を先頭に、俺たちは病院内を走り出す。フロアは案の定、感染者が溢れていた。津美紀姉ちゃんは初めて目にする光景にぎゅっと目を閉じてしがみついてきた。

  • 表に出ると自衛隊が作ったバリケードも崩壊しており、俺はバン目掛けて走り出す。車の中で見ていたのか、バンの後ろが空いて、乗れ乗れとお兄さんが手招きしていた。
    俺たちは感染者を振り切り何とか全員バンに乗ることが出来た。

  • 脹相

    これで全員か?

  • 悠仁

    そう!

  • 脹相

    壊相、車を出してくれ!感染者だらけだ、停まってたらガラスが割られる

  • 壊相

    振り切るから掴まって!

  • 運転席には二番目の弟さんが乗っていて、車を急発進させた。何人かはねたような音を出しながらバンは大通りを走る。

  • 脹相

    人が増えるなんて聞いてないぞ

  • 悠仁

    ちゃんと治療セットは貰ってきたよ!あと食料も少しだけど。お兄さん達の分も

  • 釘崎

    兄者、落ち着けよ
    食料までありがとうな
    俺は加茂血塗、一番上の兄が脹相、運転してるのが二番目の兄の壊相だ

  • 悠仁

    俺、虎杖悠仁、同級生の伏黒恵と釘崎野薔薇、あと入院してた伏黒の津美紀姉ちゃん

  • 壊相

    よろしくね

  • 壊相

    兄さん、暗くなってきたから感染者がウロウロしていて危ないよ
    どっかで休む?みんな疲れてるでしょ?

  • 脹相

    ……そうだな、人気の無い見通しのいい開けた場所がいいかもな

  • 壊相

    探してみる

  • バンは後部座席が何列か外されており、三兄弟の荷物らしきスーツケースが乗せてあった。二人がけの座席だけが残っていたので、そこに津美紀姉ちゃんと釘崎を座らせ、俺たちはむき出しの車体に、毛布を敷いて座っている。

  • 脹相は血塗の怪我の処置をすると、ようやく安堵した顔を見せた。弟煩悩らしい。

  • 脹相

    虎杖悠仁、すまなかったな、色々考えてくれたのに

  • 悠仁

    いいよ、こんな状況じゃイライラするよな

  • 悠仁

    それよりもお願いがあるんだけど

  • 脹相

    なんだ?

  • 悠仁

    俺たち、奥多摩の方に行きたくて。津美紀姉ちゃん歩けねえから送ってくれないかなって

  • 脹相

    お前たち高校生じゃないのか、そこは安全なのか?

  • 伏黒

    山奥に全寮制の学校があるんです。俺たちそこの生徒で。あそこなら配送業者しか来ないような場所だし、寮もそこそこの設備もあるししばらく暮らすなら安全だと思うんです。

  • 脹相

    なるほど……

  • 脹相

    俺達は郊外や田舎に疎開しようと思ってたんだ。東京じゃ人口密度が高くて危ないからな。
    学校なら避難者も受け入れてくれるだろうか?

  • 悠仁

    大丈夫だよな、伏黒?

  • 伏黒

    俺の姉貴も連れて行こうと思ってたんで、大丈夫だと思います。五条先生だし。

  • 脹相

    ありがとう
    じゃあ皆でそこに向かおう

  • 血塗

    話がまとまったところで、腹減ったし、食べようぜ

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