終末世界で

  • こんな世界で、大人とか子供とかって意味なんてあるかな?元の世界も同じだったけど、人間なんていつ死ぬか分からないし、この世界では子供だって戦わないといけない。

  • あの時死ぬんじゃないかって思ったから男だからとか大人だからとかじゃなく、脹相だからって気持ちで伝えたんだ。

  • 悠仁

    別にえっちが全てじゃないけど、あん時はさ、ああマッサージしてた時に、せめて抜き合いだけでもしておくんだった!って思ってさ

  • 脹相

    うう……うん……そうか……

  • 五条先生が脹相の倫理観をぶち壊してくれたお陰で、交際までは漕ぎ着けた。お互い寮の部屋を訪ね合ったり手を繋いだりは出来た。だが問題はその先だ。

  • 脹相

    ほら、着いたぞ

  • 悠仁

    うん、運転ありがと!

  • 今日は悠仁が特効薬の臨床試験に参加する為に、パンデミックのパニックを無事に生き残った医療機関に訪れたのだ。都心から少し離れているので脹相が運転手を務める。早朝に出発したはずだが到着した頃には昼間を回っていた。

  • 脹相

    (やはりどこかで泊まりになるな……泊まり……)

  • 臨床試験は何事もなく終わったが半日掛かってしまった。少し走ればホテルがあるから、と施設の人が教えてくれたが、そのホテルは避難者も受け入れているようだった。

  • 脹相

    ………………

  • 悠仁

    脹相、あのホテル行くなら今の道戻らんと……脹相?

  • 脹相

    …………

  • 脹相は無言で車を走らせる。考え事をすると周りの音が聞こえなくなるタイプかあ、と悠仁は遠慮なく脹相の横顔を眺めていた。

  • 悠仁

    髪綺麗だな〜脹相って意外と彫りが深くてかっこいいよな〜好き〜

  • 悠仁は思った事が口から出るタイプだった。

  • 車が思わず蛇行する。

  • 脹相

    悠仁……

  • 悠仁

    何処行くの?暗くなって来たから危ねぇんじゃね?

  • 脹相

    そうだな……確かこの先に……

  • 脹相は通りから外れた場所にあるモーテルへと入って行った。看板には灯りが付いているので電気は通っているようだ。

  • 脹相

    まあ、営業しているかは分からんが、空き部屋はあるみたいだ

  • 悠仁

    モーテルは思い出深いな

  • 車庫に車を停めて、部屋の入口に回ろうとした時だった。

  • 建屋の影から感染者が何体か向かって来た。
    悠仁は荷物を地面に置いてグローブを嵌める。

  • 悠仁

    マジか〜

  • 脹相

    チッ居たのか……

  • 脹相もリュックを置いて腰に付けたナイフホルダーからサバイバルナイフを取り出した。

  • 悠仁

    2.3…5体…6……うん、まずいな、車の音で湧いて来たんかな?

  • 脹相

    すまん、もう少し様子を見るんだった

  • 悠仁

    無問題!みんな寝かせてやらんと

  • 悠仁

    な!

  • 悠仁の右ストレートで一体。脹相も一刺しで脳を狙えるようになってきた。
    二人は背中を合わせて集まってくる感染者を倒して行く。

  • 悠仁

    うう……なんか全裸みたいなお姉さんも居る……ごめんっ

  • バキッ!
  • 脹相

    場所が場所だからなっ

  • ガッ!
  • 悠仁

    普通なら嬉しいはずなのに

  • グシャッ!
  • 脹相

    女に靡くなら今が最後のチャンスだぞ!

  • ガキンッ!
  • 脹相

    ナイフを噛むんじゃない!

  • 悠仁

    え?なあ、それってどういう意味?

  • ゴッ!
  • 脹相

    後から女が抱きたいと言っても離してやらないという意味だ!

  • ザクッ!
  • 悠仁

    言わないよ!ラスト!

  • ゴキッ!
  • 二人は最後の一体を倒すと、悠仁はグローブを脱ぎ捨て、脹相もナイフを落とした。悠仁は部屋のドアに脹相の体を押し付けて腰を抱き寄せる。
    脹相も少し低い位置にある悠仁の首に腕を回して、二人かぶりつくようにキスをした。

  • 悠仁

    離さんもんね

  • 脹相

    ああ、離さないでくれ……

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