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脹相はキッチンで蕎麦を茹でていた。海老の天ぷらとかき揚げは昼間に作り置きしておいた分がある。
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脹相
(ええと……子供たちはもう大体寝たから……大人達の分が……ひい、ふう、みい……)

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虎杖家の家は元々二世帯用に作られている。それは壊相と血塗が購入した家より大きかった。その為年末年始は悠仁の家に集まるようになり数年が経つ。
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悠仁と脹相の子供たち三人と、壊相の子供はほとんど眠りについた為、子供たちの寝室へ壊相の妻が付き添っていた。唯一悠仁と脹相の小学生になった長男だけは、大人達の賑やかな酒盛りに自分も混ざりたいらしく、父親の傍や血塗の周りでクリスマスにもらった玩具の剣を振り回している。
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脹相はそんな様子をコの字型のキッチンで蕎麦を茹でながら眺めていた。
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脹相
(賑やかだな……)

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悠仁ビール無くなった〜あ、そろそろ蕎麦か
日本酒がいいかな -
脹相
買っておいたのがあるだろう、そこの戸棚だ

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悠仁お、あった
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脹相
つまみは足りてるか?グラスは

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悠仁まだオードブル残ってっから無問題!グラスこっちな
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脹相
すまん

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悠仁なにが〜?あ、器出そっか?葱切る?
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脹相
昼に切ったのが冷蔵庫にある、気にせず戻りなさい

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悠仁や、飯脹相に任せきりだったからちょっと手伝うよ
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脹相
買い出しと子供たちを見ていてくれたじゃないか、助かった

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悠仁はあ〜……
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悠仁はため息を着くとコンロに向かう脹相を背中から抱きしめた。少しだけビールの匂いがした。
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悠仁俺めちゃくちゃ嬉しくてさ
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脹相
うん?

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悠仁が甘えるように脹相の首筋に顔を寄せるのを、脹相は擽ったそうに微笑んでその頭に頬擦りをする。
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悠仁兄貴達がいるのってこんな感じか〜って毎年嬉しいんだよね、皆来てくれんの
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脹相
ああ、そうか……今はこうやって皆で居られるのか……

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悠仁ま、叔父さん、アイツはいっつもアメリカだけどさ
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脹相
……俺はアイツと上手くやれるよう努力はするぞ……

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悠仁ふは、今回は流石にアレは出来んだろうけど
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悠仁だから脹相も早くこっち来れるように手伝おうかなって
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脹相
ありがとう。俺はお前達が賑やかに食事を囲んでるのを見ているだけで幸せだ……それに、こうやって人数分の蕎麦を茹でるのも楽しい

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悠仁そう言うと思った!
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悠仁はケラケラと笑って脹相を抱き締める腕に力を込める。グリグリと頭を脹相の肩に押し付けてくる。少し酔っているようだな、と脹相は笑って受け止めた。
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脹相
悠仁、危ないぞ

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悠仁ん〜お兄ちゃんも早く来てよ〜
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悠仁が巫山戯るのに、流石の脹相も吹き出してしまう。
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脹相
分かった、行くから、壊相の奥さんも呼んできてくれないか?

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悠仁了解〜
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脹相
悠仁

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悠仁ン
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脹相が呼ぶのに、悠仁は反射的にキスで応える。
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脹相
全く……世話が焼ける旦那様だ

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悠仁そうやって何だかんだ世話焼いてくれる出来た嫁さんですよ
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長男
お父さん!お酒まだあ〜??ってけちずおじさんが!
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二人は再び唇を重ねようとして、背後からの元気な声にぱっと顔を離した。
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悠仁お!ごめんごめん、今行くから〜
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長男
もお〜早くね〜
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長男は、世話が焼ける〜っとぶつくさ言いながらリビングへと戻って行った。そんな我が子を見届けて悠仁と脹相は腹を抱えて笑い合った。
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悠仁ちっさい脹相じゃん!
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脹相
流石お兄ちゃんだ!

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脹相
ふふ、はあ……盛り付けたらすぐ行くから、先に酒を頼む

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悠仁はははっおっけ!早くしてよねお兄ちゃん
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脹相
はいはい、世話が焼ける

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悠仁がウィンクしてキッチンを去る様子に、脹相は苦笑して応える。
脹相は酒を持ってリビングの輪に戻る悠仁を笑顔で迎える壊相と血塗を眺め、今年も皆で年を越せることに心から感謝した。 -
年明けに続く
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