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虎杖家はその日も家族皆で食卓を囲んでいた。
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脹相は末娘に食事を取らせようとするも、イヤ、食べないと頭を振る。いわゆるイヤイヤ期というやつで、最近毎日こんな調子だ。これをもう9回は経験してきた脹相だが、今日は末娘のイヤ、に上手く対応出来ていないようだ。
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長男
……親父、母さんなんか体調悪そうじゃね?
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悠仁え?うん、顔色悪いな
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悠仁脹相、俺変わろうか?……大丈夫か?食べてないみたいだし、ちょっと横に……
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脹相
……っすまん、頼む……

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脹相は末娘を悠仁に託すと、口元をおさえつつトイレへと駆け込んで行った。下の子達が心配そうにお母さん……と呟くのに対し、上の子供達は何度か見た光景に父親へと視線を送る。
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長男
親父、まさか……
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悠仁え?!あ!!そういう?!嘘だろ??
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暗転
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脹相
お母さんとも寝ない、お父さんともイヤだ、誰と寝たいか選びなさいと言ったらお姉ちゃんを選んだんだ……やはり女の子だな

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その晩、夫婦の寝室では末娘にフラれた脹相が、夕飯時とはうってかわってケロリとした元気な表情で娘の成長に一喜一憂していた。
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悠仁お前大丈夫かよ
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脹相
腹は減った……だが食べたらまた吐きたくなるかもしれん……でも腹が減るな……何か食べてこようか

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悠仁空腹の話じゃなくてさ
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脹相
?
ああ、デキたようだな
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悠仁やっぱり!確定か!
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脹相
懐かしい感覚だな……10回は通ったが……次は眠気が来るはずだ

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悠仁嬉しい、嬉しいけどさ、計画外だな
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脹相
俺はデキないと無責任なことを言ったな……

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脹相は先日のヒート中に言った誘い文句を反省する。経済的には悠仁に頼りきりな為、負担をかけてしまうと。
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悠仁はベッドのヘッドボードにもたれて座る脹相の腰を抱き、未だ平らな腹を撫でる。
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悠仁なんとかなるっしょ!
無事に出てこいよ、お兄ちゃんもお姉ちゃんもいっぱい居るから楽しいぞ -
脹相
もう少ししたら以前の俺くらいだな。早く追い越せよ

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悠仁以前の?ああ、特級呪物時代のね
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脹相
あれを越えてくれないと安心出来ん……カモノリトシめ……

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悠仁恨みは前世に置いてこいよ
10人産んだんだ。大丈夫だって。
楽しみだな -
脹相は悠仁の肩に頭を預ける。
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脹相
だが大変だぞ、そろそろ走り回る子供達を追い掛けるのがしんどい

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悠仁俺がいるよ
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脹相
いつか、皆で順番にインフルエンザに罹ったろう、ああいうのも……

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悠仁溶連菌とどっこいどっこいだよな
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脹相
走り回って転んでした怪我くらいなら大丈夫だが、鍋をひっくり返して火傷をした時は冷や冷やしたな

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脹相は悠仁に凭れたままこれまでの家族の思い出を話し出す。
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悠仁運動会でウチの子達、大体一位取るじゃん、裏でチームイタドリって呼ばれてるんよ、知ってた?
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脹相
そうなのか?!みんなでスポーツ選手になれるな

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悠仁でも将来の夢は消防士とかお医者さんって言ってるから、優しい子達だよ
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脹相
悠仁に似て他人に対する責任感や優しさが強いんだ。誇らしい

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悠仁お前がそうやって教えてくれたんだよ
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脹相
子供達は父親の背中を見ているぞ、あとお兄ちゃん

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悠仁はは、ブレねえな
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脹相
ああ……

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脹相
……幸せだな……

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悠仁誰も欠けないってのは、凄いことなのかもな……
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脹相
そうだ、生きてるんだな……

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脹相はしんみりと呟いて、スンと鼻を鳴らした。涙脆くなったのは本当のようだ。悠仁は脹相の手をぎゅっと握る。
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悠仁人生大体折り返しで、あと半分ずっと俺と一緒だけど飽きないでくれる?
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脹相
飽きても一緒に居るから心配するな

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悠仁はは、一緒の棺桶で焼いてもらおうぜ
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脹相
焼かれるのは……まあ死んだ後ならいいか。一緒の棺桶なら、次生まれ変わってもまた出逢えるかもな

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悠仁な?そんな気がする
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脹相が頷いたと同時に腹が鳴る。二人は思わず笑いあった。
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脹相
やはり何か食べるか、蕎麦とかならいける気がしてきた

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悠仁俺も何か食おうかな!
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脹相
悠仁は元気だな

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悠仁それが取り柄なんでね
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二人は手を取り合ってベッドを出る。
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物語が語られない間も二人と家族の暮らしは続くし、小さな出来事は毎日起こる。二人の物語は再び語られるかもしれないし、生まれ変わった次の物語でまた出逢えるかもしれない。
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おわり
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