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脹相が訪れたのは女ばかりが何人も行方不明になっていると言ういわく付きの廃墟だった。そこには一見普通の少年が佇んでいる。だが脹相には分かる。少年からは生きている人間の気配がせず、自分と似た匂い、呪霊であることを感じ取る。
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悠仁お前、人間みたいだけど人間じゃないね……濃い呪いの匂いがするよ、それもめちゃくちゃいい匂い。
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脹相
(こいつ、喋るのか)呪霊に用は無いが、俺の邪魔をするなら呪詛師だろうと呪霊だろうと祓ってやる

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悠仁俺も男には用は無かったんだけど……なんだろう、すごく……
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瞬間、脹相の頭上から声がして目を見開いた脹相が真上を仰いだ。
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悠仁俺の子種を孕ませてやりたい
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脹相は地面を蹴って距離を取り同時に百斂を放つ。少年は下半身が蛸のような無数の触手に変わっており、伸縮自在のそれで素早く地を這っているようだった。
超新星、と呟くと少年の周りの百斂が炸裂した。 -
悠仁痛っ
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脹相
穿血

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二人は暫し攻防を繰り返す。少年は始めこそ、脹相を捕らえんと攻撃を掻い潜り触手を伸ばして来たが、何度も撃ち落とされてしまう。そのうち致命傷を食らってぐったりと倒れたところに脹相が歩み寄って来た。
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脹相
お前に恨みはない。俺は父親を探してるだけだ。何か知っていたらと思ったが……それじゃ苦しかろう、人思いに祓い切ってやろう……

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脹相
!?

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突如、脹相の脳内に溢れ出した存在しない記憶ーーー
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脹相
(なんだコイツは……俺の弟だとでも言うのか?そんな……何故……まさか……)

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翌日
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悠仁(なんだろう……なんか、優しい匂いがする……懐かしいような……)
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脹相
気がついたか

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悠仁?!
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少年は飛び起きると小さな寝室のベッドに寝かされていた。傍には廃墟で自分を祓いかけた相手であるツインテールの変わった容貌の男が。あの時は変な服を着ていたと思ったが、今は髪を下ろし普通の若者の格好をしていた。
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悠仁あんた……俺は?俺を祓わなかったのか?
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脹相
……祓えなかった……削った呪力を回復させたら自己再生した……

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悠仁回復?どうやって
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脹相
…………俺の呪力を流し込んでやった

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悠仁ええ……何で?俺に孕まされたいと考えでも変わった?
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脹相
違う
……話すと長くなるんだが俺は……
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脹相は自分が呪詛師である父親に、特異体質を持つ母親と呪霊との間に作られた半呪霊であること、弟二人をその父親に利用され亡くしたこと、さらに下の弟達が居るが、特級呪物として高専という機関に保護されていることを話した。
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脹相
俺は血を操る加茂家の血を汲んでいるらしく、血の繋がりには敏感なんだ。
お前を祓いかけたとき、お前が俺の弟だと知った。
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悠仁え、俺に親なんて居ないけど……
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脹相
呪霊に生殖能力はない。無いが、俺の父親呪霊は俺の母親を孕ませるくらいの、「そういう」呪霊だったのだろう。他で作っていても不思議じゃない。
お前も「そういう」類の呪霊だろう。好みの女ばかり狙っていたな。背が高くて下半身のしっかりした……
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悠仁殺すつもりは無かったんだ。人間の姿で現れるとお姉さん達は皆んな優しかった。でも耐えられないんだ。
人間の脳じゃ。 -
脹相
…………だからってあまり感心しない

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悠仁そう?お前、人間にもあまり感心は無いみたいだけど、どうでもいいんじゃないの?あ、嫉妬?
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脹相
はあ……
確かに、人間もあまり好きではないが……だとしても無闇に命を奪うことは無意味だ
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悠仁そっか、でも俺も腹が減るし、「そういう」ので満たされるから
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脹相
…………

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悠仁そんでお前はこの境遇を作った呪詛師の父親を探してるんだっけ
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脹相
境遇に関してはどうでもいい。弟達を、母親を弄んだあの男を、葬り去ってやりたいだけだ。

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悠仁そうなんだ……俺、悠仁、お前は?
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脹相
脹相だ。「お兄ちゃん」で構わない

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悠仁本当に弟だと思ってんの、まあいいや
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悠仁脹相、俺お前のこと好き。お前の脳なら耐えられるかも。俺の苗床になってよ
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脹相
俺は半呪霊だ、生殖能力は恐らく無いぞ。それに子宮も無い

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悠仁大丈夫だよ、お前言ったじゃん、「そういう」呪霊なんだろって
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かくして、脹相はこの幼い少年呪霊を匿う形で共に暮らすこととなった。弟である以上、無闇に死人を出させない、またそうさせない為の覚悟もしていたのだった。
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