SS
昼下がりのコンサバトリー。
休憩がてらお茶会をしないかと誘われて、偶にはいいかと誘いを受けた。
穏やかな午後の日差しが暖かくて眠気を誘う。
それは向かいの席に座る彼も同じようで、小さな欠伸をしている。
彼──ルカス・トンプシーは今日誕生日を迎えた。
誕生日とはいっても、悪魔と契約をして不老の身となっているから歳をとることはないけれど。
夕べはその前夜祭だと盛り上がった酒好きの執事達に祝われながら、随分遅くまで飲んでいたようだから寝不足なのだろう。
時折目を閉じて眠りに落ちそうになっては、ハッと顔を上げてアールグレイを流し込んで、ごめんと笑っていた。
「……眠いなら部屋で仮眠をとったらどうだ」
「ああ……そうだね。でも、ミヤジがいるから眠くなるのかも」
「どういう意味だ」
「ふふ、ミヤジの傍にいると安心して気が抜けてしまう」
ふわあぁと大きな欠伸をして、体を伸ばす。
なんとか目を覚まそうと頑張っているようだったけれど、すぐにまたうとと、と船を漕ぐ。
どう見ても部屋へ戻ってベッドで眠った方がいい。
そう思って声を掛けると
「……すまない、ミヤジ。少し隣に行ってもいい?」
「それは別に構わないが……」
ありがとうと言って椅子を持って隣に置く。
そして凭れるように肩に頭を乗せた。
まさかここで眠るつもりなのかと思って体を揺すると
「可愛い恋人の我儘を聞いてよ……」
と言って寝息を立て始めた。
冗談で言ったこととは分かったが、いい歳の大人が自分で可愛いとか言わない方がいいだろうと言いたくなった。
けれどそれを伝える相手は既にあどけない寝顔を晒している。
そしてルカスはほんの軽い冗談のつもりで言っていたとしても、ルカスを可愛らしいと思っていることも事実だった。もちろん今も。
ルカスに対して可愛らしいと思っていることも照れ臭くて、その気持ちを直接本人にぶつけられるのは、せいぜいベッドの中が関の山といったところだけれど。
寝てしまったものは仕方がないと思い、しばらくそのまま時間を潰す。
自由がきく片手でルカスが持ってきていた医学書を読んだり、紅茶を飲んだりしながら過ごしていると、しばらく経ってルカスが身動ぎをした。
「ん……すまない。寝てた」
「ああ」
「お陰様で少しスッキリしたよ。ありがとう」
口ではそう言っていても顔はまだぼやぼやとあからさまに覚めきっていないし、寝息に近いような深い呼吸をしている。
ふにゃふにゃ気の抜けた顔で笑う様がどうにも可愛らしくて、周りに人が居ないことを確認してから唇に吸い付いた。
唇を触れ合わせたまましばらく動かずにいると、息苦しくなったのかとんとんと胸を叩かれる。
名残惜しく唇を離せばルカスは目をしばたたかせて、白い頬を桃色に染めあげていた。
「目、覚めたか?」
「……ああ。お陰様でね」
座り直して息を吐き出しながら顔を背けられる。
恐らく赤くなった顔を見られたくないのだろう。
そういうところも可愛らしいと考えて、自分は随分重症なのだと思い知る。
赤く染まった耳をすり、と撫でたらものすごい勢いで振り返る。
「も、もう終わりだから。目も覚めたし」
そうやって慌てている姿も可愛らしいと思われてる自覚は果たしてこの男にあるのだろうか。
いつになく慌て顔のルカスに思わず小さな笑い声を漏らすと、口をへの字に曲げて笑わないでと拗ねられる。
今夜はルカスの為にとびきりのワインを用意してある。
アルコールのせいということにして、今夜は素直な気持ちでとびきり甘やかしたい。
明日には二人揃って眠気と戦うことになるかもしれないが、それはまたその時にでも考えることにした。
休憩がてらお茶会をしないかと誘われて、偶にはいいかと誘いを受けた。
穏やかな午後の日差しが暖かくて眠気を誘う。
それは向かいの席に座る彼も同じようで、小さな欠伸をしている。
彼──ルカス・トンプシーは今日誕生日を迎えた。
誕生日とはいっても、悪魔と契約をして不老の身となっているから歳をとることはないけれど。
夕べはその前夜祭だと盛り上がった酒好きの執事達に祝われながら、随分遅くまで飲んでいたようだから寝不足なのだろう。
時折目を閉じて眠りに落ちそうになっては、ハッと顔を上げてアールグレイを流し込んで、ごめんと笑っていた。
「……眠いなら部屋で仮眠をとったらどうだ」
「ああ……そうだね。でも、ミヤジがいるから眠くなるのかも」
「どういう意味だ」
「ふふ、ミヤジの傍にいると安心して気が抜けてしまう」
ふわあぁと大きな欠伸をして、体を伸ばす。
なんとか目を覚まそうと頑張っているようだったけれど、すぐにまたうとと、と船を漕ぐ。
どう見ても部屋へ戻ってベッドで眠った方がいい。
そう思って声を掛けると
「……すまない、ミヤジ。少し隣に行ってもいい?」
「それは別に構わないが……」
ありがとうと言って椅子を持って隣に置く。
そして凭れるように肩に頭を乗せた。
まさかここで眠るつもりなのかと思って体を揺すると
「可愛い恋人の我儘を聞いてよ……」
と言って寝息を立て始めた。
冗談で言ったこととは分かったが、いい歳の大人が自分で可愛いとか言わない方がいいだろうと言いたくなった。
けれどそれを伝える相手は既にあどけない寝顔を晒している。
そしてルカスはほんの軽い冗談のつもりで言っていたとしても、ルカスを可愛らしいと思っていることも事実だった。もちろん今も。
ルカスに対して可愛らしいと思っていることも照れ臭くて、その気持ちを直接本人にぶつけられるのは、せいぜいベッドの中が関の山といったところだけれど。
寝てしまったものは仕方がないと思い、しばらくそのまま時間を潰す。
自由がきく片手でルカスが持ってきていた医学書を読んだり、紅茶を飲んだりしながら過ごしていると、しばらく経ってルカスが身動ぎをした。
「ん……すまない。寝てた」
「ああ」
「お陰様で少しスッキリしたよ。ありがとう」
口ではそう言っていても顔はまだぼやぼやとあからさまに覚めきっていないし、寝息に近いような深い呼吸をしている。
ふにゃふにゃ気の抜けた顔で笑う様がどうにも可愛らしくて、周りに人が居ないことを確認してから唇に吸い付いた。
唇を触れ合わせたまましばらく動かずにいると、息苦しくなったのかとんとんと胸を叩かれる。
名残惜しく唇を離せばルカスは目をしばたたかせて、白い頬を桃色に染めあげていた。
「目、覚めたか?」
「……ああ。お陰様でね」
座り直して息を吐き出しながら顔を背けられる。
恐らく赤くなった顔を見られたくないのだろう。
そういうところも可愛らしいと考えて、自分は随分重症なのだと思い知る。
赤く染まった耳をすり、と撫でたらものすごい勢いで振り返る。
「も、もう終わりだから。目も覚めたし」
そうやって慌てている姿も可愛らしいと思われてる自覚は果たしてこの男にあるのだろうか。
いつになく慌て顔のルカスに思わず小さな笑い声を漏らすと、口をへの字に曲げて笑わないでと拗ねられる。
今夜はルカスの為にとびきりのワインを用意してある。
アルコールのせいということにして、今夜は素直な気持ちでとびきり甘やかしたい。
明日には二人揃って眠気と戦うことになるかもしれないが、それはまたその時にでも考えることにした。