一つ一つ重ねたカミは

 運命は変わらない、けれどその「後」なら?
 「世界の裏側」。あの人がいなくなった後に世界を走り回って得た、言い伝えのような伝説のような眉唾もののその噂。
『知ってるか、世界の裏側の話』
『捨てられたものが行くところ』
『そこは不要品の場所、骨組みと闇でできている』
『送られたものは意識を失い自我を失いただ溶けゆくのみ』
『完全に無になったとき、それは世界の材料になる』
 そんな裏側の話。
 どこにあるのかなんてわからない。心当たりもない、けれど、もしかしてと思うものならあった。
 あの時。「本当の空」を探したときにパンチさんが見せてくれたもの、次元の挟間。その先にあるものこそが「世界の裏側」なのではないか。
 そこに干渉する手段があれば、あったとして何がどうなるかはわからなかったけれど、何か、何かが、どうにかなるような気がして、探し回った。
 探しても探しても見つからなかったけれど、諦める気にはなれない。ここで諦めれば全てが終わりになってしまう、そんな気がした。
 自分の気持ち。それに気付いてしまった以上、「わからない」ふりをしていた私には戻ることはできない。
 気付いてしまったからには動くしかない、向き合うしかない。私の根源、そうだ、消えた太陽を、恋しいあの人を、「取り戻し」たいという気持ち。
 なんてことのないようで困難な願い、それを叶えるためにずっと周ってきた。
 ようやくわかったそれを手放さないように懸命に、走り回る。
 けれども物事はそう簡単にはいかないようで、世界の裏側は見つからない。
 もう少し、あともう少しで何かが掴めると思う、けれども何かが一歩足りない。
 それが何かわからないまま、何百回目、意識が落ちるのを感じて。
 次こそは。
 そうして次が「最後」のような。
 そんな気がして。
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