一つ一つ重ねたカミは

 サウンドディスクは繰り返さない。
 そのはずだった。
 なのに。
「よォ紙ッペラ」
 存在してしまったのは何の因果か。
 わからなかった、何もわからなかったけれど、「ああ、チャンスが来た」と思った。思ってしまった。
 始まりはたぶんそこから。



 毎回記憶を持って繰り返していたわけではない。気付くときと気付かないとき、何もかも終わってから気付くとき、私が終わる直前に気付くとき、色々、色々だった。
 運命を変えようと思っていたわけでもない。そもそも変えると言っても何を変えるのかわからないし、チャンスだと思いはしたけど何のチャンスかもわからなかったし、何もかもが五里霧中だった。
 あの人は相変わらず怖いし、返答次第で穴を空けられる状況も変わらないし、ただただ保身と、少しの■■。それが何かはわからなかったけれど。
 繰り返すことは嫌ではなかった。そうでなければ毎夜サウンドディスクを回すDJになんてならなかったのだし。
 「日常」をこなしてさえいればいつかはなんとかなるはず、そう思って。
 けれどもあの人がいなくなった後の喪失感だけはいつまで経っても慣れなかった。
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