一つ一つ重ねたカミは

 さよならだけが最後の救い。
 そんな言葉をどこかで聞いた。
 本当なのかどうかは知らない。私たちがそういう関係性だったのかどうかも知らない。
 だけどあのさよならは救いなんかでは決してなかったと今は思う。
 解放されたはずだった。だけどそのとき私はもうそうなってしまっていて、それは新たな地獄の始まりにすぎなかったのだと。
 空いた穴が埋まらなくて、知ってしまった煌めきにもう手は届かないのだということを。
 わかりたくなかった。
 わかったはず、わかろうとしたはず、わからないといけなかったはず。
 だけどどうしてもだめだった。
 どうしても、わかるわけにはいかなかった。
 わかったはず、もどこかでわからない、になる。
 わからない、わかってはいけない、そしてそれを忘れるわけにはいかない。
 いつしかそれは楔になって、いつからかわからないけれど回っている。
 ミラーボールの向こう側から反対側、そっち側からあっち側。
 何だかわからないけれど途中で止めるなんてまっぴらごめんだし、そんなことだって途中で何回も思ってきたんだと思う。
 今度こそ、とか、今回も、とか、だけどそれだけはどうしても認められないことが多くて、
 ああ、私はあの人のことが、
 なんていつになったら認められるんだろう。
 案外認めてしまったら終わってしまうのかもしれないけど、わからない。
 わからないけれど、今はまだ、このままでいたい。
 こんな状況でそんなことが言える時点でまだまだ余裕がある、のかも。
 別にそんなことはいいんだ。
 たった一つの目的を果たすことさえできれば過程は何でも構わない。
 回る、回る、
 それだけが私に唯一残された――
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