一つ一つ重ねたカミは

 考えるのは好きじゃねえ。
 考えるヒマがあったら踊ってた方がマシだからだ。
 それでも考えるのは考えちまうからだ。考えちまうのはしょうがねえ、やめようとしてやめられるもんでもないし。
 それに考えるってのは武器にもなる。何の武器になるかって? 知らねー、ことにしとく。答える義務もねえし。
 とにかくおれッチは考えてた。
 何をかって?
 あいつのことだ。
 だが考えても考えても何もわかんねーし、意味のない思考を回すんなら穴空けた方がマシかと思い始めた頃にあいつが声をかけてきた。
「パンチさん」
「あ?」
「大丈夫ですか?」
「何が」
「最近元気ないみたいだから……」
「オマエが気にすることか?」
「す、すみません」
 でも、と続ける。
「元気がないなら休んだ方がいいですよ。……遺跡寒いし、風邪とかじゃないといいんですけど」
「はー? 文房具が風邪とか引くと思う?」
「え、え、」
 わかりません、とあいつ。
「引くかもしれないし……」
「引かねーよ。たぶん」
「パンチさんもわかってないんじゃないですか」
「どっちでもいいだろそんなこと」
「まあ、そうですね」
「で、何が言いたいの」
「たまには休んだ方がいいですよ」
「そんなこと言って自分が休みたいだけじゃねーの」
「なんでそうなるんです?」
「おれッチが休んだらオマエも休めるじゃん」
「そう……ですかね? そう、かも」
 初めて気付いたみたいな反応してるからたぶん意図しちゃいなかったんだろう。何か知らねーけど腹が立ってくる。
「つまんねーこと言うのやめてくんない?」
「す、すみません」
 そもそもこんなことになってんのオマエのせいだし。責任取ってくれるんだろうな?
 なんて言ったらこいつのこと考えてるってバレるから言いたくない。じゃあどうする。
「パンチさん」
「何だよ」
「いえ……」
「何」
「呼んでみただけです」
「はー?」
「す、すみません」
「意味わかんないんだけど」
「お、怒らないでください……」
「怒ってねーし。元はと言えばオマエがノれる曲かけねーからこんなことになってんの」
「すみません……」
「つまんねー毎日が続くし、つまんねーことしかねえし、つまんなくないのは、」
 言いかけて口をつぐむ。
 何だ? 何を言おうとした? おれッチは何を考えてる?
 流れるように漏れちまう言葉ってのは本音って思った方がいいのか?
 わかんねー、何もわかんねえ。
 イライラする。
 空けてえ。すぐに。
「パンチさ……」
 カチ。
 一つ、鳴らす。
 空けはしねえ。何かが邪魔をした。何が邪魔をしたかなんて知りたくねー、わかりたくもねえ。つまんねーにもほどがある。
 まあ別に今すぐ解決しなきゃいけないってわけでもないし、イライラしてばかりもいられないし、なんて上っ面の空回しで片付くことでもない。どうするんだってどうしようもない。どうなってんだっておれッチが一番聞きたい。
 それなら次はもっと楽しくなれよなって何に向かって言ってんのか何のことを言ってんのかわかんねーしそれもわかりたくなかった。
 いつかの話。
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