一つ一つ重ねたカミは

「機械っていいですよね」
「は?」
「システマティックだし、我々にはできないことを楽にしてくれるし、手入れするとちゃんと応えてくれるし最高ですよね」
「……?」
「パンチさんは機械ですか?」
「おれッチは動力がねーから機械じゃなくて道具なんじゃねーの?」
「そうですよね」
「わかってるなら訊くなよ」
「でもパンチさんはどっちかというと生き物って感じがします」
「はー?」
「機械とか道具とかじゃないっていうか」
「何言ってんだ、おれッチは紙に穴空ける道具だぜ。使われてなんぼってやつ」
「でもパンチさんは生きてるじゃないですか、命がある」
「くだらねえ」
「なんか、違うんですよね」
「今日はやけに語るじゃねーか」
「こうしてDJやってると機械というか道具に愛着持つようになるんです」
「まあ、仕事道具だしな」
「毎日手入れしてるうちに本当に生きてるように感じたりして」
「はあ」
「パンチさんの関節とか、メタリックな部分とか、見てると何か……」
「コーフンするか?」
「えっ」
「イイんだろ、おれッチが」
「ご、誤解を招くような発言はやめてください」
「でも実際そうだろ」
「ち……」
 違います、とも言い切れなくて私は慌てる。
 そもそも私はどうしてこんな話を始めたんだっけ?
 毎日機材の整備をしていると毎日機材と向き合うことになって、見慣れたメタリックなカラー。しかしそれとは全然違う、「ホンモノ」のメタリックを私は見て、それが、
「パンチさん……」
「なんだよ」
「なんでもないです」
 きれいだなあ、とため息を吐き。
 特に追求もされずその夜は終わった。
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