一つ一つ重ねたカミは

 空ける。呑む。空ける。呑む。
 繰り返す姿を目の前で見てきた。
「DJ~」
「なんですか」
「チョコ」
「わかりました」
 最近この人はチョコレートに凝っている、というか、チョコレートをよく「食べる」。
 食べると言っても穴を空けて呑むだけなのだが、本人は気に入っているようで、毎日パチンパチンと食べている。
「どうぞ」
 パチン!
「やっぱチョコはいいな。感触がたまんねえ」
「感触とかあるんですか?」
「ちょっとつっかかるのがイイ。ノコノコに穴空けるときと似てるな」
 怖すぎる。訊かなければよかった。
 この人のお腹の中にはきっとそのノコノコも入っているのだろうな。
「もう一個よこせ」
「もうそろそろなくなっちゃいますよ」
「なくなったら作れよ」
「えっどうやって……」
「オリガミ兵に買いに行かせた。手作りチョコってやつがあんだろ? やれよ」
「えっ」
「できねえのか?」
「や、やります、やります……」
「ハハハ。愛込めろよ」
「あ、愛って」
「手作りチョコってそういうものなんだろ? 知らねえけど」
「ええと、その、そう……ですね……?」
「オマエはおれッチが好きだもんな!」
「!?」
 私はこの人にどんな認識をされているんだ!?
 でもそう言われてみると、嫌い、ではないし、何を言われてもそれなりに受け入れる気になっているような、恐ろしいけれどかわいいところもある、みたいな、完全に否定するのもなんだかよくわからない感じになってきて、
「…………」
「なァ?」
 ずい、と威圧される。
「は、はい」
「ハハハ!」
 笑うパンチさん。
 別に脅さなくたって、言葉が欲しいなら言うぐらいはするのに。
 なんて言葉は飲み込んで、
「頑張りますね」
 とだけ返した。
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