一つ一つ重ねたカミは

 穴を空けられたらどうなるのだろう。
 空けられる瞬間はやっぱり痛いのかな。
 穴あきキノピオたちは普通に動いているし、空けられた後はそんなに痛くないのかもしれない。
 どうなるのだろう、どうなるのかな。
「DJ」
「何ですか」
「最近さぁ、オマエあんまりビビらなくなったよな」
「え? そんな……ことはありませんよ」
「どうしちゃったの? ひょっとして穴空けてほしいわけ?」
「……」
「そうかそうか、それならすぐ言えばいいってのに水臭い奴だな。ほら、こっち来い」
「いや、その」
「来いって」
「……ええと」
 どうすればいいのかわからず動かないでいると、しびれを切らしたパンチさんがずい、と近付いてきた。
「オマエも協力しろよ、自分から挟まるぐらいしたら?」
「えーとその、穴を空けられたいわけではないんですが……」
「はあ? じゃあ何なわけ?」
「いえ……気にはなってるんです」
「何が?」
「穴空けられたらどうなるのかなって……」
「それやっぱり穴空けられたいんじゃん! 早く言えよな!」
 嬉しそうに言うと、ぱし、とパンチさんは私を挟んで、
 …………
「パンチさん?」
 穴を空けようとしたのか、刃が頬に触れている。
 パンチさんはその姿勢のまま固まって、何やら考えているようす。
「どうしたんですか?」
「……いや」
「空けないんですか?」
「いや……やっぱ今日はやめとくわ」
「えっ」
「ここで空けたせいでいつか来るサイコーのノリにノれなくなったら最悪だし」
「あ、え、そういう……」
 買ってくれている。
 そう己惚れてもいいのだろうか。
「あ、りがとうございます……」
「ハハ」
 軽やかなステップで元の位置に戻るパンチさん。
 くい、と角で私を指す。
「ん」
「……はい」
 かけろ、ということだろう。
 私はミュージックディスクに針を落とし、
「それじゃあいくぜ!」
 いつか空けてくれる日は来るのだろうか。
 くれる、なんて表現をしている時点でもう重症だけれど、きっととっくの昔に致命傷は追っていて。
 そして今日もナイトフィーバーが始まる。
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