一つ一つ重ねたカミは

「DJDJ~」
「何ですか」
「DJってハツコイ?」
「は……はつこい?」
「なーなーハツコイ?」
「ハツコイって……初恋? えっ初恋……初恋?」
 何度も聞き返すDJに、ハツコイはハツコイだろ何度も言わせんなと返す。
「ハツコイって……えーと、誰が誰にですか?」
「オマエがおれッチに」
「えっ」
「ハツコイだろ?」
「えっ……」
 言いよどむDJ。なんかおかしなこと言ったか?
「そういうのは……隠すものでしょう」
「つまりハツコイなのか?」
「いやその……ええと」
「そうだろ?」
「ええと……」
 DJは黙り込む。つまんねえ、何か喋れよ。
「DJ~」
「……」
「ハツコイって何だ?」
「え!? 知らずに言ってたんですか!?」
「いやわかるはわかるけど、わからん」
「わかるのかわからないのかどっちです」
「感覚がわからん」
「知りたいんですか?」
「別に?」
「なら聞かないでくださいよ……」
「は?」
 ずい、と一歩寄るとすみません、と小さくなる。おもしれー。
「ハツコイがどんな感じかわかった方が音楽も楽しめるだろ? だからオマエにハツコイなのかって聞いてんの」
「いやなんで私がパンチさんに初恋ってことになるんですか」
「違うの?」
「えっと」
「えっと?」
「……」
「DJ?」
「わかりません……」
 なんで顔が赤いんだ、この顔に穴を開けたら赤いまま残るんだろうか、なんて考えて――
 バチン!
「ヒェッ」
「なんで避ける?」
「避けますよそりゃ!」
「わかんねーな」
「わかんないのはパンチさんの方ですよ……」
「は?」
「す、すみません……」
 小さくなるDJに満足したので今日はこの辺で勘弁してやろうなんて考えるおれッチも丸くなったもんだと思う。
 まあ、
「次までに答え見つけとけよ」
「は、はあ!?」
「あとなくしたサウンドディスクも見つけとけ」
「えっ……」
「明日が楽しみだな?」
「え、あ、はい……」
 扉を閉める。ハハ。明日が楽しみ、か。
 ……明日なんて来ないってわかってたのにな。
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