一つ一つ重ねたカミは

「オマエは『トクベツ』だからな」
 その言葉で青ざめてたDJがいつからか、頬を染めるようになった。
 頬を染める、その反応にどんな意味があんのかって、わかるようなわからないような、生憎おれッチに染める頬はないからわかんねーけどそれだってよくわからねえ。
「DJ」
「何ですか」
「何でもねえ」
 名を呼んで、嬉しそうに笑うあいつをただ見る。
 意味がわからねーけど面白え、つまりいくら脅しても壊れなくなったってことか? サイコーじゃん。
「DJェ」
「何ですか」
「何でも……ねえ」
 脅しても壊れなくなったはず、だから存分に嬲ってやろうと声をかけるのに、あいつが笑うのを見るとそれだけで何だかどうでもよくなっちまって、声をかけるだけ。
 おれッチらしくねえ、全くもっておれッチらしくねえ。
 気持ちが悪い。
 穴空ければマシになるかと思って空けたり戻したりしてみたが、何も変わらねえ。
 つまんねー、どうなってんだ? 全くもってイケてない。こんなのおれッチじゃねえ。間違ってる。
「DJ」
「何ですか」
「……」
 何もできねえ、どうなってんだ。
「オマエ、何かしたか?」
「何かって、毎日曲をプレイしてるだけですよ」
 おれッチは曲にノってるからこうなってんのか? それならこいつはどれだけ優秀なのか、なんて考えるのもアホくせえ。腹が立つ、どうなってんだ。感情の出どころがわからねー。
「オマエ、わかるか?」
「何がです?」
「なんでこんなに腹立つのってこと」
「わ、私何かしちゃいましたか?」
「してるんじゃねえの? そうじゃなきゃこんなことになるわけないじゃん。責任取ってくれるんだろうなァ」
「ヒェ……すみません……」
 それでも怯えてる様子はねえ。どうなってんだ、いつからこうなった?
「DJ」
「何、ですか」
「何でもねえ」
 どうでもいい、どうでもいいんだ。だからこの感情が何かとか、考える意味はねー。
 ただノれればいいだけ、これまではそうだったしこれからもそう。
 だからおれッチは……蓋をして、
 それでおしまい。
28/82ページ
スキ