一つ一つ重ねたカミは

 空けたくて空けたくて仕方がねえ。
 それで毎日空けた。
 パチン、パチン、貫通する穴が空いていくさまが面白くて、刃が当たって抜ける感覚が気持ちよくて。
 穴あけパンチに生まれたんだ、穴空けるのは当然だろ?
 仕事、それ以上にやみつきになる何かがあった。それが誰かに「決められた」ものでも構わなかった。気持ちイイことは何でもしたい、誰だってそうだろ?
 そんなわけで毎日空けた。
 全然ダメなDJ、たまにしかノれねー楽曲、そんな日々の中、穴を空けるときだけは確実にノれる。
 楽しい。楽しい。
 まさに穴あけフリーク。
 パチン。
 悲鳴。
 パチン。
 哀願。
 サイコーだぜ。ずっとやってられる。
 だけどおかしい、だんだんつまんなくなった。
 勝てなくなった。
 あいつがサイコーの曲をプレイしたときのアガり方。それと比べてこりゃ何だ。
 おかしい、楽しいはずなのに。
 あいつがいるから駄目なのか?
 それじゃあいつに穴を空ければおれッチは楽しくなるのか?
 明日こそノらせてみせますとあいつが笑う度に胸がぐるぐるする。おかしい、おかしくなっている。おかしいんだ。穴を空けても楽しくない。それにもう、穴を空ける紙ッぺラがいない。
 あいつに空ければいい、空けさえすればきっと戻れる。
 明日空けよう。そう思った翌日におれッチは死んだ。
 思い返してもわかんねー。なんで楽しくなくなったのか。楽しくなくなったからおれッチは死んだのか、穴あけに飽いた穴あけパンチは穴あけパンチじゃねえ。そういうことか?
 考えてもわかんねーし生き返れるわけでもねえ。残った意識も散ってきた。
 消滅する前にもう一度だけサイコーのノリを味わいたかった、そう思ったとき遺跡にDJがやってきてあの曲をプレイする。
 消え際のおれッチの都合のいい幻覚かどうかは知らねー、どうでもいい。
 どうですかパンチさん、と訊くあいつに、
『サイコーだったぜ、サンキューDJ』
 って返して。
 あとは、白――。
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