そんな時もあったな、なんて

「太陽が戻ってみると暑いっすね~師匠」
「そうだね、暑いね~」
 かぜぬけるトンネルに出張DJするために私と弟子くんはブーツカーに乗っていた。
 太陽が戻った砂漠の日差しはとても強く、身体がじりじり焼けているような気さえしてくる。
「暑いね、暑い……何かひんやりしたものでもあればいいんだけど……ひんやり?」



『なに、寒いって? ノってねーんじゃないのDJェ~』
『そんなこと言われましても、寒いものはさむ……』
 バチン!
『ヒェッ』
『避けてりゃ暖まるんじゃね?』
『や、やめてくださいー!』
『……そうだ!』
 パンチさんの動きがぴたりと止まる。
『なんか身を寄せ合えば温かいとか言うじゃん!? 試してみようぜ、DJ!』
『え、ええ~……ってつめたっ!』
『失礼だな!』
『パンチさん……身体、冷たっ!』
『そりゃ、金属だからな』
『キンゾク……?』
『紙ッぺラは知らねーか。おれッチの身体は金属でできてんの、だから冷たいの』
『なんでキンゾクは冷たいんですか?』
『え? なんでって……知らねーよそんなこと。めっちゃ熱くなるときもあるし、周りが冷たいと冷たいこと多いな~場合によるんじゃね? でもよ、ハハ、これじゃ温め合えねえな!』
『はは……そ、そうですね……でも』
『あ?』
『ありがとうございます』
『何で礼なんか言ってるの? ワケわかんねー奴だなオマエやっぱりおもしれー!』
『は、はは……』



「……」
 忘れていた。
 そんな記憶。
 砂漠は暑い、この暑い砂漠でパンチさんの身体は冷たくなるのだろうか、熱くなるのだろうか、そんなこともわからないまま私は、私たちは――
「師匠?」
「え?」
「考え事すか?」
「あ、ああ……まあね」
「師匠も周り注意してくれないと存在消し飛んでカミッペラになっちゃいますよ~」
「わ、笑えない冗談だね……でも、そうだね、気を付けるよ……」
 存在。
 そうだ、もういない。
 あの時間が何だったのか、どうしてふとしたときに記憶の奔流に押し流されるのか、全くわかりはしないけど……
 もういない、そのことがわからない私ではない。
 でも、わからない、わからないんです……あなたが一体何だったのか、どこから来たのか、全てがわからないまま。
 わからないまま、それはじりじりと照り付けているんだ。
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