一つ一つ重ねたカミは

「DJェ」
 呼ばれて、なんですかと応える。
「オマエ、空を知ってるか?」
「空……? 天にあるあれですか?」
「ちっがーう、もっと深くて青いやつ」
「? 空は空じゃないんですか?」
「察しが悪いな、この世界の空は本物の空じゃないんだよ」
「本物じゃないって……」
「本物の空は紙ッペラなんかじゃねーんだよ。どこまでも広がる空間なの。それが空なの」
「よくわかりませんけど……」
「見たことねーからわかんねーんだな!? よし」
 パンチさんはさっと私を掬い上げる。
「うわっ、な、なんですか」
「じっとしてろ」
 扉をくぐり、階段を上り、外へ。太陽がなくなった空。
「穴空けりゃ出てくるだろ」
 バチン!
 パンチさんが空に一つ、穴を空ける。
「……む」
 身体を傾げるパンチさん。
 穴の向こうには黒々とした「無」が広がっている。
「夜……じゃねーな。次元の狭間か」
 バチン、バチンと次々穴を空けるパンチさん。「無」の穴が増えていく。
「あァそーかよ……つまんねえ」
 ぺ、と空を吐き出すと、穴が元に戻る。
「帰るぞDJ」
「えっと」
「帰るぞ」
「……はい」
 私を乗せたまま階段を降り、遺跡に入り、扉をくぐり、DJブースに私を放り出すとパンチさんは部屋に戻って扉を閉めてしまった。
「おれッチは寝る。起こすなよ」
「えっ……あ、はい……」
 それからしばらくパンチさんは出てこなかったが、朝のないこの世界の昼頃に出てきたパンチさんはいつも通りで、その後パンチさんから「空」の話が出ることは二度となかった。
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