一つ一つ重ねたカミは

 サウンドディスクは繰り返さない。針を落として、真ん中まで行ったら外れて、それで終わり。
 現実も同じだと思っていた。
 なのに。
「よォ紙ッぺラ。DJって書いてあるけどお前音楽できんのか?」
「パ……パンチさん……」
「ん? なんでおれッチのこと知ってんの? おれッチそんな有名だった?」
「いえ、あの……」
 消えたはずのパンチさん。
 戻ったはずの太陽。
 パンチさんは現れ、太陽は消え、キノピサンドリアは静寂。
「……まあいいか。DJ、来いよ。おれッチ専属にしてやるぜ。それが嫌なら」
「嫌じゃありません」
「……?」
「私をあなたのDJにしてください」
「ハ。聞き分けの良い奴。おもしろくねーな」
「……」
「なんなら今ここで穴空けてやってもいいんだぜ?」
「それは困ります」
「おれッチは困らねーけど?」
「私は優秀なDJです。最高の曲がかけられる、あなたの望む通りに」
「へェ、それで?」
「何もかも忘れて踊り狂う。あなたの望みじゃないですか? 私ならばそれを叶えることができます」
 バチン!
「……ッ」
「そこでかわすー? すばしっこい奴。でもまあ……よっぽど自信があるみたいだな? 本当におれッチをアゲさせられんなら文句はねー、ついてこい。……期待してるぜ、DJ」
 そうして「二巡目」は始まった。
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