一つ一つ重ねたカミは

 森に出張なんてしなければよかった、後悔はいつも後になってから。
 地面には大量のセミ。命を無くした体、死んでいるのだ。
 あ、と思ったときにはもう遅かった。
 抜け殻一つ残さずいなくなってしまった、よぎる黄色の残光。ぐるぐると回り始める記憶の断片。
『こんな曲じゃノれねーよ』
『こういう曲もう卒業したの』
『言っただろ、トクベツだって』
『ナイスDJ!』
 怪物はマリオさんが退治してくれて、私は、私たちは解放されて、気にすることなんかない、何もないはずなのに。
 永遠の夜は終わった、そのはずなのに。
「――さん」
 ふとした瞬間燃え上がって私の心を焼いていく、あなたの残光は消えてはくれないのだ。
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