ペーパーマリオオリガミキング

「今年も年末だね、弟子くん」
「そうですね、世界は滅んじゃいましたけど」
「世界が滅んで初めての年末、なんだかわくわくしないかい?」
「そうですかね?」
「私たち以外は誰もいないってことなんだよ」
「まあ、師匠と二人きりでいられるのはオレは嬉しいかもしれません」
「ふふ……」
 撮りためておいた「終末」以前のテレビを見ながらオレと師匠はこのシェルターでこたつに入っている。
 師匠は目が見えないから、副音声つきで。
「みかん缶食べますか、師匠」
「もらおうかな」
「……はい」
 オレはみかん缶の蓋を開け、皿に盛ってフォークをつけて師匠の前に置く。
「どうぞ」
「ありがとう、弟子くん。……弟子くんは食べないの?」
「オレはいいです」
「そっか、食料が減っちゃうと困るもんね」
 師匠はにこ、と笑う。
 わかっていて言っているのか、わからずに言っているのかはわからない。
 本当は終末など来ておらず、外はいつもの年末を迎えていることを。
「おいしいですか、師匠」
「うん、おいしい。……ねえ弟子くん」
「……」
「初日の出、」
「ありませんね」
「そう……」
 師匠の表情は読めない。
 この人はときどき、何を考えているのかわからない顔をする。
 太陽は昇らない。太陽のない世界に師匠を監禁したから。
 二度と脅かされることはない。脅かされなくても、いい。
 それなのに師匠はオレに訊く、
「弟子くん、太陽は」
「滅んでしまいました」
「ふふ……」
 師匠は笑う。
 その瞳。
 オレはたまらず師匠の手首を掴んで、
「いいよ、弟子くん」
「…………」



 それが、在りし日の年末。
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