ペーパーマリオオリガミキング

 オレの師匠は神DJ。毎日サンドリアを湧かせていた。
 そんな師匠がある日突然いなくなって、探しても探しても見つからなくて、オレはずっと待っている。



 師匠がいなくなった日。
 朝起きて、店に行ったら鍵が開いていなくて、合い鍵で入った。
 中には誰もいなくて、いつもなら師匠が先に来ていて「おはよう弟子くん」なんて言ってくれるのに、今日はおかしいなと思った。
 待っていれば来るだろうと思い、店番をしつつ待っても師匠は来ない。
 体調でも崩して倒れているのだろうかと家まで見に行ったが師匠はいなかった。
 部屋の鍵は開いていた。
 開いているんだから中にいるんじゃないか。
 そう思って、ベッドの下とか戸棚の中とか探してみたが、見つからない。
「師匠ー」
 呼んでみても出てくるはずもなく。
 少し出掛けているだけかもしれないと思い、師匠が行きそうな場所を探してもみたが、師匠はいなかった。
 部屋で待っていれば戻ってくるだろうか。そう思って待ってみる。

 待った。

 師匠は夕方になっても帰ってこない。
 その日は出張DJの仕事がない日だったので仕事に穴は空かなかったが、念のため、その先の仕事をキャンセルする手配をしておかなければ。

 夜まで待った、その日は師匠の家に泊まる。
 朝になっても帰ってこない。
 店に行ったらいるかもしれないと思って店に行く。
 やっぱり師匠は帰ってこなくて、朝の日差しだけが差し込んでいた。



 オレは待った、ずっと待った。けれども師匠は帰ってこなかった。
 いつになったら帰ってくるのだろう。
 こんなに待っているのに。
 いつの間にか街には「あのDJは太陽に呼ばれたのだ」という噂が流れていた。
 太陽って何だよ。抽象的で意味がわからない。オレはその噂を聞く度に否定して回っていたが、しかし、心当たりのようなものがないわけでもなかった。
 あの頃。いつからか、師匠は突然魂が抜けたようになってぼうっと窓の外を見つめていることが増えていた。
 どうしたんですか、と聞いても答えてくれず、ああ、弟子くんいたんですね、とか言われるだけ。
 オレはずっとここにいるのに。
 どうして?
 それはともかく、空を見つめるその様子が、太陽を見ているようだと思われたのならそれはそうなのだろう。
 なぜ太陽を見ていたのかは知らない。あの事件が起こったとき、キノピサンドリアでは太陽が失われたというから、そのことに関連しているのかもしれない。
『失われた太陽に焦がれていた』
 そんな言葉がふと浮かぶ。
 太陽に焦がれる?
 太陽はもう、戻ってきているのに?

 師匠は帰ってこない。
 ……そういえば、探していないところが一つだけあった。



 深夜。
 オレは砂漠を抜けてキノピチュ遺跡に向かう。
 こんなところに師匠がいるはずがないけれど、一応、念のため。
 遺跡に入って、VIPルームみたいな部屋を抜けてフロアに出る。
 噂によるとここはダンスフロアとして使われていたらしい。
 ダンスフロアということは、DJもいたのだろうか。
 誰が?
 さあ。
 オレには関係ない。
 VIPルームは使用された形跡があったが、そこに誰かいたのだろうか。
 さあ。
 オレには。
 ダンスフロアの上、何かが落ちたような大きな穴。
『本当はわかってるんだろ?』
『知らないふりをしてるんだろ?』
『残念でした』
 うるさい、うるさい。
 どうしてオレを呼ぶ?
 師匠を救ってやれなかった、アンタなんかが。
 ……?
 知らない、オレは知らない、はず。
 だからDJブースの側に落ちている人型の白い紙のことだって、知らない……はず。

『弟子くん……どうして』

 サングラスが床に落ちて、あのときの師匠の目の色だって知らないはず。

『かはっ……そういう、わけなん、ですね。私を、■■■さんと同じところへ……』

 ありがとう、
 ございます、

 そう言って■■■た師匠のことなど。
 知らないはず。

『あーあ』

 フロアの端でオレは立ち尽くす。
「悪魔め……」
 あんなものがいたから、師匠はあんなことになった。
 師匠が■■だのは悪魔のせいで、師匠は悪魔に誑かされた。
 太陽に憧れた?
 違う。師匠は騙されたんだ。
 あいつのせいだ。
 あいつの……

『オマエがヤったんだよ』
『二度と戻らねー』
『あーあ!』

「違う……オレは……」

 わからなかった。
 何も。
 だから、
「師匠……すぐに行きますから」

 向こう側があるのかどうかなんて知らない。そうすれば師匠と同じところへ行けるのかなんて保証もなかった。
 けれどオレにはもうこれしかなかった。
 師匠のいない世界で生きるなんてそんなことはもう、できるはずがないから。
 だから「そう」した。
 それで終わり。
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