還らぬ永遠

「師匠……師匠」
 探し回る、師匠はいない。
 いつからいなくなったのかはわからない。いつの間にか、気付くといなくなっていた。
 最初はふらふらと遺跡に行ってしまうだけだった、もはや主のいなくなったあの遺跡に。
 師匠は「アイツ」を探していた。この街の住人を攫っていったと言われているあの怪物を。
 師匠がアイツを好きだったのかどうかはわからない。自分を誘拐した相手のことを好きになってしまうという例のあれなのかもしれない、知らないけど。
 とにかく師匠はふらふらと遺跡に行ってはアイツの名前を呼んでいた。そのときの師匠はまるでオレのことなんて見えてないみたいで、扉の向こうに呼びかけては落胆する。
 何の繰り返しだよ。哀れすぎるだろ。
 まあとにかく師匠はそんな感じだったのが、しかし気が付いたときにはもう「いなくなっていた」。
 遺跡にいるだろうと踏んで探しに行ったのに「いない」。けど、どこからか音楽は聞こえる。
 遺跡に残っていたDJブースも機材も動いてはいなくて、だけど耳を澄ますとかすかに鳴っている。
 ひょっとしてオレの頭がおかしくなったのかもしれない。知らない。確かなのは師匠がいなくなったということと、遺跡で耳を澄ますと音楽が聞こえるということ。
 二つの事実を総合すると、見えてはいけないものが見えてくるような気がする。
 そんな非現実的なことが起こっていいと思うか?
 オレはよくないと思う。
 だけど聞こえる。
 ……オレは遺跡に行かなくなった。
 もとより師匠を探す以外の用事もない。師匠がいなくなったならあそこを訪れる者はもう誰もいないのだ。
 いたとしても物好きな観光客か学者が訪れるぐらいだろう。オレは行かない、そう、行かない。
 師匠はアイツが好きだったのだろうか。
 浮かぶ、思考。
 わからない。
 師匠は今、幸せなのだろうか。
 わからない。
 狂ってしまったのは誰なのだろうか。
 わからない。
 太陽も夜もいなくなっても生活は続く。
 何かが欠けたかのような。
 別にいいんだ、大したことじゃない。そう思うことでオレは自分を守っているのかも。
 あのとき師匠を置いて帰ったりしなければ。
 朧気な記憶は「真実」で、オレはそれを懸命に埋める。
 いつの間にかいなくなったんだ。オレの知らない間に。そうだった、それこそが本当の真実で。
 本当に?
 狂っているんだ。
 それは誰が?
 日常はただ、続いてゆく。
 ■■はいない。
3/4ページ
スキ