ペーパーマリオオリガミキング

『空けますか?』
「ああ?」
『……』



 いつからか、声が聞こえた。
 空けますか、と問う声。
 それだけ。
 時間、場所、関係なしに声は聞こえる、空けてても空けてなくても聞こえる。
 最初はうざってえと思ってたが、だんだん慣れてどうでもよくなった。
『空けますか?』
 バチン!
『空けますか?』
 バチン!
 訊かれようが訊かれまいがおれッチは空ける。なぜってそういう道具だから。
 空けねえパンチはパンチじゃねえ。わかってるだろ?
『空けますか?』



 その日。
「や、やめて……空けないでください、なんでも、なんでもしますから……」
「……」
 おれッチの前で無様に命乞いした紙ッぺラの声に、おれッチは身体を傾げた。
「オマエ」
「は、はい!」
「どこかで会ったか?」
「え」
 ぱち、と瞬きする紙ッぺラにおれッチは、いや、いい、と返して角ですくい上げる。
「わっ」
「オマエ、DJだろ。仕事だ」
「は、はい……?」



 紙ッぺラ、DJはまるでセンスがなかった。
 選ぶ曲選ぶ曲、全部ダメ。
 ダメの権化なんじゃねーかと思うほどノリがダメだった。
 けど、ときどき。
 何かが。
 言い表せない何かが、光る気がして。
 空けずに置いてやっていた。

 そんなある日。
「パンチさん!」
「あ?」
『空けますか?』
「……オマエ、何か言ったか」
「え、パンチさんの名前を呼んだだけですけど……」
『空けますか?』
「……畜生」
 忘れたと思っていた、消えたと思っていた、そういやこいつと会った日から声は聞こえなくなっていた。
『空けますか?』
 なんで今になって? 何が原因で?
『空けますか?』
 わからねーけど声は聞こえる。
『空けますか?』
「パンチさ……」
「黙ってろ、紛らわしい」
『空けますか?』
 目の前のコイツを?
『空けますか?』
 すっかりおれッチを信頼しきってる馬鹿を?
『空けますか?』
 それはとても、
『空け、』
 バチン!



「パンチさん」
「何だ」
「次はどんな曲をかけましょうか」
「何でもいい、好きなやつにしろ」
「えっ」
「は?」
「わかりました」
 声は聞こえなくなった。
『   ?』
 聞こえねえ。
『   ?』
 ざまあみろ。
『   ?』
 穴を空けた、だから聞こえねえ。
「それじゃあいくぜ!」
 こいつの声しか聞こえねえ。
『    』
 それでいい、それでいいんだ。
 侵入者を告げるオリガミ兵を横目で見ながらおれッチはあいつを見る。
 そう、これでいい。
『    』
 ああ、終わる。
『    ……』
 それはたぶん、残滓だった。
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