ドレホ
もたれかかり目を閉じた身体、細くなる息。
99%。バジル・ホーキンスは今まさに死にかけていた。
真向かい、古代種を宿す者は海色の瞳に目の前の男を映しながら、乞う。
「呪ってくれ、おれを呪え、ホーキンス。
……これが最後だ。
呪ってくれ……
おれがお前を忘れないように……記憶に焼き付き消えないように……呪ってくれ、ホーキンス……お前の名を、恋を、おれに……全て。呪ってくれ……
ホーキンス」
バジル・ホーキンスは僅かに動く。それが「呪い」の行使であったのかどうか、互い以外に判別できる者はなく。
「ありがとう、ホーキンス……これでお前を忘れない。覚えていられる……ホーキンス。……ホーキンス? ……ああそうか。お前は、もう」
X・ドレークは目を伏せる。海が隠れ、夜になる。
――本当は。
――死んでほしくなどなかった。
それに気付けたのは最後の最後、呪詛を乞うことしかできずに終わったそれを。
――一生抱えて生きるのだろう。
かつて。そっと掬って口付けた金糸が流れたのも、最後まで温度の低いルビー色が灯した微かな熱の揺れも全て、全てが今、焼き付いたように消えなくて、X・ドレークは安堵した。してしまった。
呪いをかけた話。