魔法少女クレス

「ぶわあああ!」
「何だアリストロ、うるさいぞ」
「な……ナスターシャム! なんだその服は!」
「ナスターシャムではない、クレスだ」
「ナスターシャム! なんだその」
「二度言わなくてもわかる、あとこれは服ではなく装備だ」
「装備だと!?」
「ふわふわパニエ、シックなヘッドドレス、あと……」
「説明しなくてもいい、その……許されない! その服は許されないぞ、ナスターシャム!」
「何が許されないんだ?」
「かわ……ンン、いやその……衆愚どもが貴様に釘付けになってしまう! 愚かなりナスターシャム!」
「何を言ってるのかさっぱりわからん。そろそろいいか?」
「待て、よくない!」
「いくぞギル助」
「おうよ、クレス」
「「トランスフォーム!」」
「ま、待て、その衣装でトランスフォームするのはっ」
「問答無用! それに衣装ではなく装備だ! くらえ!「「スーパースノーサンシャイン!」」
「ぐわー!」



「なあ、ギル」
「なんだー?」
「アリストロはいつも意味不明だが今回は特に意味不明だったな。あいつは何が言いたかったんだ?」
「あーそのー……なんだ」
「?」
 クレスは首を傾げる。
「ぐっ」
 ギル助が胸を押さえる。
「まあなんだ、たぶん、お前が……」
「俺が?」
「かわいすぎる、みたいな……」
「ふっ、なんだそれは」
 吹き出すクレス。
「俺がかわいいだと? やはりアリストロはおかしい」
「あーその」
「何だ、ギル」
「俺も……」
「お前も?」
「なんだ、その、お前がかわいいってのはたぶん……誰も否定しないと思うぜ」
「はは、まさか」
「………」
 『俺もお前のことかわいいと思ってる』そう言いたかっただけなのに言えなかったのはなぜだろう、とギル助は思う。
 これまで出会ってきた魔法少女には全員さらりと言えたのに、クレスに対してだけはなぜか調子が狂ってしまう。
 自分とクレスはとんでもなく合うと思うのに、所々で調子が狂う。
 それがなぜなのか、ずっと「マスコット」として役目を果たすだけだったギル助にはわからない。
「………」
「どうした、珍しく元気がないな」
「いや、なんでもねえ」
「今夜も飲むか?」
「ん……そうだな、飲もうぜ」
「……」
 対して、少し不器用なクレスには、ギル助に元気のない理由がわからないのであった。
 つづく。
4/10ページ
スキ