その他単発CP

「おほぉーっ月が綺麗だねぇ!」
「ギルデロイ、あまりはしゃぐな」
「わかってるって! 月の力で活性化する魔物の討伐任務のついてだろ、でもこんな月が見られるなんて運がいいぜ!」
「その月で俺たちは足労しているというのに暢気なものだ」
「まあまあ。今日は二人きりだしちゃちゃっと終わらせて月見と洒落こもうぜ」
「なぜ俺がお前と二人きりで月見をしなければならない?」
「なぜって? そりゃ月がそこにあるからだろ」
「ふ、何だその答えは」
「何だって言いつつ笑っちまってるじゃねえか、フフ」
「ふふふ……、む」
「おう、お出ましだな」
 月に照らされ、兎型の魔物の影が伸びる。
「団体さんのお出ましだ、もてなしてやろうぜ!」
「望むところだ、行くぞ」



「ふぃ~狩った狩った!」
「親玉も倒したし、しばらくこの魔物の被害はないだろう」
「兎肉がいっぱい……明日はパーティーかね?」
「フ、持って帰るのが大変だ」
「そのためにこのでかい荷車を借りてきたんじゃねえか」
「そうだったな」

 月に照らされ、荷車が進む。
 荷車を引くのはギルデロイ。
「一緒に引くと言ったんだが」
「一度やってみたかったのよ、荷車の荷物のてっぺんにお姫様載せて引くやつ!」
「俺は姫ではない」
「俺にとっちゃ姫みたいなもんよ」
「何だと?」
 荷車の上のクレスは片眉を上げる。
「おっとと怒りなさんな。姫のように美しくて魅力があるってことよ」
「何を言ってるのかわからないが」
「姫がお気に召さないなら女王がよかったか?」
「姫でも女王でもない、俺はクレスだ」
「ふ……わかったよ、クレスさん」
「わかればいい。あと『さん』はいらない」
「クレス……お前の名前、ほんとにいい響きだよな」
「お前の名前も悪くはないぞ、ギルデロイ」
「おほぉ、それは嬉しいねえ。ほら、クレス、月」
「知っている」
「綺麗だねぇ」
「……俺は、風景を綺麗だと感じる心は失われたが」
「……」
「お前が綺麗だと言うなら、そうなんだろう」
 クレスは小さく笑う。
「………」
 ギルデロイは片腕で顔を隠す。
「? どうした」
「お前それ反則……」
「な、俺は反則などしていない!」
「わかってるよ、いやあお前さんはほんと……帰ったら月見酒でもしようぜ、クレス」
「いや、俺は……」
「団子も買ってある。甘さ控えめのやつ」
「……」
「お前が嫌じゃないなら俺はお前と飲みたい」
「……物好きな奴だ」
「はは。商人なんでね」

 月はまだ、高い。
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